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過度の緊張(過緊張)に効く漢方(1)
過度の緊張(過緊張)の考え方と漢方処方

2014/06/12

 緊張すること自体はごく自然なことですが、それが強すぎたり長く続いたりすると、体調不良の原因となります。漢方では、過度の緊張は五臓の肝(かん)の機能不調が大きく影響していると考え、その肝の機能を調整することにより、「緊張体質」そのものを改善していきます。

 人前で話をするときや、初対面の人と会うとき、だれでも緊張するものです。緊張すること自体はごく自然なことであり、病気でも何でもありません。

 しかし緊張する状況が日常的に繰り返されたり、緊張の度合いそのものが強かったりすると、寝付きが悪い、胸苦しい、動悸、肩こり、頭痛、喉のつかえ感、のぼせ、冷え、暑くもないのに汗が出る、口の中がねばねばする、過度のいらいらや不安感といった症候が出現することがあります。あるいは、自分は緊張しやすいという思い込みがあるために、緊張する場面が近づくと思うだけで動悸などの症状が現れる場合もあります。

 西洋医学では、このような過度の緊張(過緊張)は、自律神経系のバランスが崩れて交感神経が優位な状態が必要以上に長く続いている状態ととらえています。活動や攻撃に向けて身体を調整する交感神経が必要以上に亢進している状態です。

 本来ならば心身をリラックスさせたい夜間や休息時にまで、昼間や仕事中の緊張を引きずり込んでしまい、過度の緊張が生じる場合も少なくありません。寝ている間も過度の緊張が続くと、ちょっとした物音で目が覚める、朝起きたときから肩や身体全体がこっているなどの症状が生じます。毎朝、目覚まし時計が鳴る前に目が覚めてしまうという人もいます。睡眠中に歯の食いしばりや歯ぎしりをしている人も多いでしょう。副交感神経が優位となっているべき時間帯にもかかわらず、交感神経が強く働いている状態といえます。

 今回の過緊張のように、病気とは言えないまでも、辛い症状があるために漢方薬を飲む、という人は少なくありません。放っておくと、自律神経失調症、高血圧症、不安神経症、不眠症、うつ病、総合失調症、動脈硬化、不整脈、甲状腺腫、更年期障害、慢性頭痛(緊張型頭痛)などの病気になる可能性もあります。漢方薬で「緊張体質」そのものを改善しておけば、過度の緊張で体調を崩すことが減り、将来病気になる可能性も少なくなります。

 漢方では、過度の緊張には五臓の肝(かん)の機能失調が大きく影響していると考えています。肝は五臓の一つで、身体の諸機能を調節(疏泄[そせつ])する臓腑です。自律神経系や情緒の安定、気血の流れと深い関係があります。(五臓は内臓ではなく、肝も肝臓という臓器ではありません。)

 肝には、ほかに血を貯蔵して循環を調整する(血を蔵する)機能と、筋肉や関節の運動を調節する(筋をつかさどる)機能もあります。

 この肝の機能が失調したり、弱ったりすると、疏泄機能がスムーズに働かなくなり、過度の緊張状態となります。人間の意識や思惟など、高次の精神活動(神志[しんし])をつかさどる五臓の心(しん)の機能が乱れて過緊張が生じる場合もあります。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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