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脱毛・薄毛・抜け毛に効く漢方(1)
脱毛・薄毛・抜け毛の考え方と漢方処方

2013/12/10

 髪の毛のことを漢方では「血余(けつよ)」といいます。血(けつ)は人体の生命活動に必要な栄養を意味します。大切な生命活動に血を使い、その余りが頭髪になる、という意味合いです。髪の毛の質には、その人の栄養状態が大きく反映されます。

 人の体は、自ら健康を維持するようにできています。もし体内の栄養状態が悪化した場合、体は生きていくために重要な内臓を守るため、必要な栄養はまず内臓に優先的に回されます。その結果、髪の毛や爪などに供給される栄養が手薄になります。その結果、髪の毛が抜けたり薄くなったり細くなったり、また爪がもろくなったりします。

 髪の毛や爪は体の外から見えるので変化が分かりやすいという側面もあります。いずれにせよ、抜け毛が増えたり髪が薄くなってきたりしているならば、それは体内の健康状態が悪化してきていることを警告するお知らせです。外観上の問題も大事ですが、健康を維持する、あるいは健康状態の悪化を予防するためにも、体質から改善しておくのがいいでしょう。

 脱毛・薄毛・抜け毛の証(しょう)には、以下のようなものがあります。

 一つ目は「腎虚(じんきょ)」証です。腎は五臓のひとつで、成長・発育・生殖をつかさどります。腎と髪とは関係が深く、「腎の華は髪にある」といいます。この腎が衰えることにより、髪の質が低下します。老化や、生活の不摂生、過労、慢性病による体力低下などにより生じます。腎を補う漢方薬を使って髪の質や量を改善します。

 二つ目は「血虚(けっきょ)」証です。人体に必要な血液や栄養が不足している体質です。毛根に十分な栄養が供給されていない状態なので、脱毛・薄毛・抜け毛が発生します。この体質の人には、血を補う漢方薬を用います。

 三つ目は「脾気虚(ひききょ)」証です。消化器系の機能が弱い体質です。消化吸収能力が低いので飲食物を栄養として取入れる力が弱く、頭髪に供給される栄養も少なくなります。この体質の人に対しては、胃腸機能を丈夫にする漢方薬を使って治療を進めます。

 四つ目は「肝鬱気滞(かんうつきたい)」証です。五臓の肝(かん)は自律神経系や情緒の安定と関係が深く、ストレスや緊張で機能が乱れます。その結果、気の流れがわるくなり、それが血行にも影響を及ぼします。肝気の流れを改善し、ストレス抵抗性を高める漢方薬で、脱毛・薄毛・抜け毛を改善していきます。

 五つ目は「湿熱(しつねつ)」証です。湿熱は体内で過剰な湿邪と熱邪が結合したものです。脂っこいもの、刺激物、味の濃いもの、生ものやアルコール類の日常的、あるいは大量摂取などにより、発生します。湿熱が頭皮に至り炎症を起こさせると、毛根の正常な活動が阻害され、髪の発育に影響が生じます。漢方薬で湿熱を除去し、改善していきます。

 六つ目は「肺気虚(はいききょ)」証です。体表をつかさどる五臓の肺の機能が低下している体質です。体表、特に頭皮や毛根を活性化させる漢方薬が適しています。

■症例1

「去年くらいから脱毛が気になります。今年になって範囲が広がり、心配です」

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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