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歯周病に効く漢方(1)
歯周病の考え方と漢方処方

2012/07/17

乾姜 (かんきょう)
ショウガ科の多年草ショウガZingiber officinale の根茎。熱性が強く、体内の冷えによる諸症状、特に胃腸症状に使われます。一般に3~9グラムを煎じて服用します。

 歯周病は、歯茎が腫れて炎症を起こし、歯を支えている骨が溶けていく病気です。一昔前は歯槽膿漏とも呼ばれていました。現在、大人の約8割、子どもでも約5割が歯周病です。自覚症状が少ないまま進行するため、治療や予防をおろそかにしがちですが、放っておくと歯が抜け落ちます。

 歯周病と関係が深いものにプラークがあります。歯垢(しこう)ともいいます。プラークは、口の中に残った食べかすに、口腔内の細菌が住み着いて増殖し、糊状になったものです。1mgのプラークの中に数百種類の細菌が合計で数億個いるそうです。

 歯周病菌は、そのプラークの中にいます。だれの口の中にもいます。歯磨きが本当にきちんとできていれば、あまり歯周病の心配はありません。しかし口の中が不潔だと菌がどんどん繁殖し、歯周ポケット(歯と歯茎のすき間)にたまり、歯肉と歯槽骨に炎症を起こします。膿も出ます。そして歯肉と骨が徐々に侵され、歯が抜け落ちることになります。

 なかには歯磨きが完璧にできていても、さらに歯科医院に通っていても、歯周病が根治できない人もいます。そこには免疫力の低下が関係しています。

 漢方では、歯周病は熱邪によるものと考え、根底にある免疫力の低下は気血の不足や臓腑機能の衰えにあるととらえます。炎症や出血がひどい場合は炎症を和らげ、歯科医院に通っていてもなかなか治らない場合は免疫力を高めることにより、歯周病に対処します。

 歯周病の証(しょう)には、以下のようなものがあります。

 一つ目は「胃熱」証です。熱邪が歯茎をおかし、歯周病になっています。炎症が強く、出血、化膿といった症状が出ます。この証の人に対しては、胃熱を冷ます漢方薬を使います。

 二つ目は「胃陰虚」証です。五臓六腑の胃の陰液が不足しています。陰液が少ないので相対的に熱が余り、それが熱邪となって歯周病を引き起こします。口の中が粘つき、唾液が少ないのが特徴です。免疫力が発揮できず、歯周病を根治できません。胃の陰液を補う漢方を使って、体質から歯周病を治していきます。

 三つ目は「脾気虚」証です。消化吸収機能が弱く、免疫力が低下している証です。歯周病菌の勢いがなかなか弱まらず、歯周病が根治できません。脾気を補う漢方薬が有効です。

 これらの証以外にも、ストレスの影響で炎症が生じやすい「肝火(かんか)」証や「心火(しんか)」証もみられます。歯茎が黒ずんでいる場合は「血瘀(けつお)」証の改善も必要です。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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