
黄連(おうれん)
キンポウゲ科の常緑多年草オウレンCoptis chinensis などの根茎。
清熱、解毒、抗菌、鎮静作用があります。炎症などに用いられ、整腸作用もあります。
一般に1.5~9グラムを煎じて服用します。
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流して食道の粘膜を刺激し、粘膜に炎症やびらん(粘膜のただれ)、潰瘍を引き起こす病気です。本来は胃の中のものが口のほうへ逆流しないように閉まっているはずの胃の入口、噴門が、何らかの原因で開いているために胃酸や、場合によっては食べたものが食道に逆流してきます。胃酸は強い酸性なので食道の粘膜を傷つけ、痛みや不快感が生じます。
噴門が開くのは噴門部の筋肉が緩んでしまうためですが、それ以外にも、胃酸そのものの過剰分泌、食道の蠕動運動の失調、食道裂孔ヘルニアなどにより、この病気は生じます。これらの症状は、ストレス、暴飲暴食、特に脂肪の多い食事や過度の飲酒、それに肥満、喫煙、猫背など悪い姿勢、加齢などにより生じやすく、近年この病気は日本で増え続けているようです。パソコンを前に背中を丸くしてあごを出して足を組んで座る姿勢も相当胃を圧迫していることでしょう。
よくみられる症状は、胸やけ、げっぷ、むかつき、酸っぱい胃酸が口までこみ上げてくる(呑酸)、吐き気などです。さらに、みぞおちの痛み、腹部膨満感、胸の痛みや不快感、胸の辺りがつかえる感じ、のどの違和感や痛み、咳などの症状もみられます。いずれも食道やその周辺が胃酸などにやられて生じています。
漢方では、この病気は五臓六腑の「肝(かん)」や「胃」の不調によるものととらえています。肝は五臓の一つで自律神経系と関係が深く、ストレスの影響を受けやすい機能です。「胃」は六腑の一つで、飲食物の消化をする器官です。これらの機能が失調した結果、逆流性食道炎になります。
漢方でいう六腑の「胃」は、解剖学的な臓器としての胃とはイコールではありません。六腑の胃は、解剖学的な胃や小腸などの消化器官や、さらに消化酵素なども含めた概念です。胃の消化機能を胃気(いき)といいます。胃は五臓の「脾」と密接な関係にあり、飲食物を消化して栄養とし、残りを下方へ運ぶ機能が胃で、胃が消化した栄養を吸収して全身に運ぶ機能が脾です。
漢方では、逆流性食道炎になりやすい証(しょう)には、おもに以下のようなものがあると考えています。
一つ目は「肝火犯胃(かんかはんい)」証です。ストレスなどの影響で五臓の「肝(かん)」が熱を帯びて肝火となり、胃の降下機能を妨げます。そのため熱邪による胸やけ、呑酸などの症状が起こります。この証の人に対しては、肝火を冷まし、胃を落ち着かせる漢方薬を使います。
二つ目は「胃陰虚(いいんきょ)」証です。胃の陰液が不足して熱を制しきれずに熱が上昇し、胸やけなどが生じます。この体質の場合は、胃の陰液を補うことにより熱を冷まし、胃の機能を正常化させていきます。
三つ目は「食滞(しょくたい)」証です。暴飲暴食などで胃に相当の負担がかかり、胃の降下機能がストップします。そのために胸やけや吐き気、げっぷが生じます。漢方薬で消化吸収機能を高めて逆流性食道炎の治療を進めます。
これら以外にも、加齢や疲労の蓄積で胃の機能が低下した体質の「胃気虚(いききょ)」証の人などもみられます。
まずは最も多くみられる「肝火犯胃」証の症例からみていきましょう。