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めまい・ふらつきに効く漢方(1)
めまい・ふらつきの考え方とストレス性めまいへの漢方処方

2011/11/24

黄芩(おうごん)
シソ科の多年草コガネバナScutellaria baicalensis の根。
抗炎症作用や解熱作用が強く、皮膚の化膿や湿疹、頭痛、不眠にも用いられます。
一般に6~15グラムを煎じて服用します。

 一過性の軽い「めまい」や「ふらつき」なら疲れたときや体調の悪いときに経験するものですが、めまいが持続したり、繰り返し起こったり、ふらついてまっすぐ歩けなかったり倒れそうになったり、ということを経験すると心配になります。

 回転性のめまいは内耳と関係があり、浮遊感のあるめまいは中枢神経系と関係があるようです。めまいが特徴的なメニエール病は、内耳の病気です。また急に立ち上がったときや、長時間立っているときに生じる「立ちくらみ」は、脳の血液循環量の減少と関係があります。自律神経系の失調や、精神的なストレスの影響で生じる場合もあります。

 漢方では、めまい・ふらつきのような揺れ動く症状は、病邪の一つである「風邪(ふうじゃ)」によるものと考えます。風邪の特徴は、揺れ動くこと以外に、発病や病態の変化が急であることなども含まれます。一般のかぜや感染症の多くも風邪に含まれますが、ウイルスや細菌など外界からの刺激ではなく、体内の変化が原因で生じている場合、その風邪を「内風(ないふう)」と呼びます。めまい・ふらつきは、この内風と関係がある場合が少なくありません。

 漢方では、めまいやふらつきが起こりやすい証(しょう)には、主に以下のようなものがあると考えています。

 一つ目は「肝陽化風(かんようかふう)」証です。自律神経系をつかさどる五臓の「肝(かん)」が乱れ、内風が生じているタイプです。ストレスや情緒変動が引き金となって生じやすく、頭痛や耳鳴りを伴うことがよくあります。この証の人には、五臓の肝を落ち着かせて内風を和らげる漢方薬で治療を進めます。

 二つ目は「痰飲(たんいん)」です。痰飲とは体内にたまっている過剰な水分や湿気のことで、これが原因で体調を崩しているのがこの証です。痰飲が内風と共に上昇し、めまいやふらつきを生じさせています。したがって吐き気や頭重感など、湿っぽい症状を伴いやすい証です。過剰な水分や湿気を取り除く漢方薬で体質を改善していきます。

 三つ目は「腎虚(じんきょ)」証。成長・発育・生殖をつかさどる五臓の「腎」の衰えにより、めまいやふらつきが生じます。老化や生活の不摂生、過労、慢性病による体力低下などにより発生します。耳鳴りや目のかすみ、足腰の衰えなどを伴います。腎を補う漢方薬を使います。

 四つ目は「気虚(ききょ)」です。人体の生理的機能を推進する「気」の力が弱まり、血液を頭部に押し上げる力が不十分となり、めまいやふらつきが生じます。疲れたときや、急に立ち上がったときに、めまいやふらつきが起こります。この証の場合は、気を補う漢方薬が効果的です。

 五つ目は「血虚(けっきょ)」証です。人体に必要十分な血液や栄養が不足している体質です。頭に十分な栄養が供給されていない状態ですので、めまいやふらつきが発生します。目のかすみや、頭がぼーっとするといった症状がふだんからある場合が多いでしょう。こういう体質の人には、血を補う漢方薬を用います。

 これら以外にも、血行がよくない「血瘀(けつお)」証の人などもみられます。頭部への血流が悪化して、めまいやふらつきが生じます。季節の変わり目や朝夕にめまいが生じやすい、などの特徴があります。

 まずは「肝陽化風」証の症例からみていきましょう。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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