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子宮内膜症に効く漢方(1)
気血(きけつ)の流れの改善を目指す

2011/08/26

人参(ニンジン)
ウゴキ科の多年草オタネニンジンPanax jinseng の根。
気を補う作用が強く、胃腸障害や精神疲労にも効果的です。
一般に1~9グラムを煎じて服用します。高血圧の人には使いません。
(写真:室川イサオ)

 子宮内膜症は、もともと子宮の内側にしか存在しないはずの子宮内膜が、卵巣や子宮の外側などにもできてしまう病気です。その部分が生理の度に、普通の生理と同じように、剥がれては出血を繰り返すため、次第にお腹のあちこちで炎症や癒着が生じてきます。

 激しい生理痛が主な症状ですが、ホルモン療法や外科手術を受けても再発しやすく、生理の度に痛みが強くなる場合も多く、患者さんの中には「体質から改善したい」と漢方薬を服用する人が増えています。

 漢方では、子宮内膜症は気血(きけつ)の流れが悪い体質の人に生じやすい病気と捉えています。気血の流れの停滞は、痛みや出血、炎症と深い関係にあります。冷え症などとも関係があります。

 子宮内膜症になりやすい証(しょう)には、主に以下のようなものがあります。

 一つ目は「血瘀(けつお)」証です。血(けつ)の流れが悪い体質です。「卵巣がはれている」「チョコレート嚢胞(のうほう)がある」と病院で言われた人には、この血の流れが悪い体質がよく見られます。血とは血液や栄養のことです。こういう場合は漢方薬で血の流れをサラサラにして治療を進めます。

 二つ目は「気滞(きたい)」です。精神的なストレスや過度の情緒変動が気の流れを阻害し、その結果、子宮内膜症が発生・悪化します。免疫系やホルモン内分泌系の機能の異常とも関係しています。この場合は漢方薬で気の流れを改善することで、子宮内膜症を治療していきます。

 三つ目は「血虚(けっきょ)」の証です。癒着などの影響で血液や栄養が十分に行き届かなくなると、痛みや炎症が生じます。漢方薬で血を補い、病態の改善をしていきます。

 四つ目は「寒邪(かんじゃ)」、つまり冷え症の体質です。冷えは、痛みや免疫力低下、炎症の拡大、婦人科系の機能の低下との関係が深いので、子宮内膜症の悪化の原因となります。お腹を温めると楽になるという人は、漢方薬で冷え症の改善を進めます。

 これら以外に自律神経系や生殖機能と関係が深い五臓の「肝(かん)」や「腎」の機能が乱れた証や、体液の流れがよくない「痰飲(たんいん)」の証などもみられます。

 子宮内膜症を悪化させる要因として、不摂生な生活、過労、睡眠不足、喫煙、大気汚染物質や食品添加物などの影響もあるといわれています。いずれも気や血の流れを悪くして、上記のような体質につながっていくものと思われます。

 まさに現代人は子宮内膜症にかかりやすい環境に生きているといえますが、日常生活ではできるだけ悪化要因を遠ざける努力も必要でしょう。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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