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蕁麻疹に効く漢方(1)
蕁麻疹の考え方と湿熱型蕁麻疹に効く漢方

2011/07/21

鹿茸(ロクジョウ)

シカ科のマンシュウジカCervus nippon の雄の、まだ骨質化していない幼角(袋角)。強力な滋養強壮作用があり、造血作用を促進します。一般に0.5~3gを煎じるか、粉にして服用します。
(写真:室川イサオ)

 蕁麻疹は、突然発生する皮膚の病変です。なんらかの刺激を受けて発生する場合が多く、赤くふくれる膨疹(ぼうしん)は、とにかくかゆいのが特徴です。ふつうは長くても数時間程度で消えてしまいます。この蕁麻疹、さまざまな原因で生じますが、最近、ストレスによる蕁麻疹が増えているように思います。心配ごとが募ったり、イライラが続いたりすると現れる蕁麻疹です。

 一般に、蕁麻疹は、サバや猫の毛、アスピリンなどによるアレルギー性蕁麻疹、下着のあたるところなどに出る機械性蕁麻疹、紫外線の刺激による日光蕁麻疹、汗などの刺激によるコリン性蕁麻疹、こたつやストーブの刺激による温熱蕁麻疹、冷風や冷たい床との接触による寒冷蕁麻疹などが、よくみられます。

 もうひとつ、このところ多いように思われるのが、心因性蕁麻疹です。ストレスや緊張が大きな負担となると、からだに蕁麻疹ができてしまいます。子どもでもストレスを抱えていることが少なくないようで、このタイプの蕁麻疹にかかる場合があります。

 以上は、原因別にみた蕁麻疹の種類です。西洋医学では、どのタイプの蕁麻疹に対しても抗ヒスタミン剤や抗アレルギー薬を処方するのが一般的ですが、漢方では、蕁麻疹の根本原因である患者さんの体質、つまり「証」に合わせ、さまざまな漢方薬が処方されます。

 いちばん多いのが、体内に熱や湿気が過剰に存在している体質です。証は、「湿熱(しつねつ)」証です。熱も湿気も健康の維持には適量必要なものではありますが、それが多すぎると体調不良や病気の原因となります。

 そして最近増えているのが、「気滞血瘀(きたいけつお)」証です。気や血の流れがわるい体質です。ストレスや緊張、不安、イライラなど精神的な要因の影響で、蕁麻疹が生じます。

 「気血両虚(きけつりょうきょ)」証の蕁麻疹もあります。疲れたときに、蕁麻疹が出やすいのが特徴です。

 寒冷蕁麻疹の場合は、上のいちばん多いタイプとは逆に、冷えが体調悪化に影響しやすい体質です。冷えと余分な湿気が体内に存在する「寒湿(かんしつ)」証です。

 以上のような体質の人に、なんらかの刺激が引き金となって、蕁麻疹が発生します。

 蕁麻疹という病変そのものは「風邪(ふうじゃ)」です。急に生じたり変化したりする病変を風邪といいます。蕁麻疹が出ているときは、この風邪に対処した処方も必要となります。

 一回きりの蕁麻疹や、ごくまれに蕁麻疹が出る程度でしたら抗ヒスタミン剤で対処できますので、漢方薬のお世話になることは少ないでしょう。しかし、蕁麻疹の原因を特定できる場合はそれほど多くなく、実際には原因不明の蕁麻疹が全体の7割以上といわれています。再発を繰り返す場合は、漢方薬で体質改善するといいでしょう。

 基本的には上記の証に合わせて漢方薬で体質改善をすすめつつ、蕁麻疹が発生したときには風邪(ふうじゃ)に対応した漢方処方を服用する、というやり方がいいのかもしれません。しかし現実的には、蕁麻疹発生時のかゆみや発赤の改善には西洋薬を使い、蕁麻疹が繰り返し生じるという事態を根本的に改善していくために漢方薬を飲む、という方法が効果的な薬の使い方だと思われます。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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