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更年期障害に効く漢方(1)
更年期の基本的な考え方と証

2011/04/12

(写真:室川イサオ)

 更年期障害は、更年期に現れるさまざまな精神的、肉体的な症状のことです。女性の更年期は閉経年齢の50歳前後を中心に、45歳から55歳くらいまでの期間をさしますが、個人差が大きく、早ければ30歳代から更年期症状がみられることもあります。

 更年期障害が起こるおもな原因は、女性ホルモン量の低下です。卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌量は、妊娠適齢期の20〜30歳代をピークに減り始め、40歳代後半に急激に減少します。加齢による減少ですので自然なことではありますが、この時期に体調が大きく変わり、つらい思いをしながら更年期を過ごす人は少なくありません。

 更年期には、およそ7割程度の女性が何らかの不定愁訴を感じているといわれています。10人中7人もの女性が更年期障害を実感しているわけです。しかし一方で10人中3人は、ひどい更年期障害を体験しないまま更年期を過ごしていることになります。そういう人たちの体内でももちろん女性ホルモン量が急激に減っているのですが、それが体調の悪化に影響していないわけです。これは、女性ホルモンの急激な低下に対し、いい意味で“鈍感”なため、不快な症状が現れていないのでしょう。

 漢方では、からだ全体のバランスを重視して病気や症状の改善をすすめています。からだ全体のバランスがよくないと、病気になりやすく、体調を崩しやすくなります。からだ全体のバランスすなわち証(しょう)をみて、その証を改善する漢方薬を処方します。

 更年期障害においても、ひとりひとりの証を正確に判断し、その証を立て直すことにより症状を改善していきます。からだ全体のバランスが調ってくれば、体調が安定し、女性ホルモンの変化に対しても、いい意味で“鈍感”になります。漢方では、このようにして更年期症状を緩和していきます。

 更年期障害の証にはさまざまなものがありますが、よく見られるものが三つあります。

 一つ目は「腎陽虚(じんようきょ)」証です。女性ホルモンと関係が深い五臓の「腎」機能の低下とともに、その他の機能の低下を伴います。

 二つ目は「腎陰虚(じんいんきょ)」証です。女性ホルモンの低下とともに、体液などの基礎的物質の減少に伴う相対的な機能亢進がみられます。

 三つ目は「肝気鬱結(かんきうっけつ)」証です。自律神経系や情緒の安定と関係が深い「肝」の機能が乱れます。

 更年期になって証が大きく変わる人もいます。その時点での正確な弁証をすることが大切です。詳しくは症例のなかで見ていきましょう。

 更年期障害は女性だけの病気ではなく、男性にもあります。しかし女性と違い、男性の場合は男性ホルモンの減り方が緩やかなので大きな体調の崩れを感じる人が少ないのが現状です。

 更年期障害に性ホルモン量の減少が深く関係しているのは事実です。しかし更年期に体内で起こっている変化は性ホルモン量の減少だけではありません。それ以外に自律神経系の失調や、循環器系や消化器系、泌尿器科系、それに皮膚や筋肉の機能低下も同時に進行しています。メンタル面でも、家庭内のストレスや老後への不安も高まる年齢です。

 そのような更年期に、ホルモンを補充するだけでやり過ごすのではなく、ホルモン以外の要因も広く考慮に入れつつ更年期障害に対処していくのが漢方の特徴です。

著者プロフィール

幸井俊高(「薬石花房 幸福薬局」代表)
こういとしたか氏。東京大学薬学部卒業。北京中医薬大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院修了。1998年、中国政府より中医師の認定を受け、日本人として18人目の中医師となる。2006年に「薬石花房 幸福薬局」を開局。『漢方でアレルギー体質を改善する』(講談社)『男のための漢方』(文春新書)など著書多数。

連載の紹介

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
東京の老舗高級ホテル「帝国ホテル」内で、完全予約制の漢方薬局を営む幸井氏。入念なカウンセリングを行い、患者一人ひとりに最適な漢方薬を選んでくれる薬局として、好評を博している。これまで多くの患者と接してきた筆者が、疾患・症状ごとに症例を挙げて、漢方薬の選び方と使い分けについて解説する。

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