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年末年始の発熱患者対応、薬局を軽視し過ぎていないか

2021/01/06

 「年末年始に、もし診療所を開けるとしたら、薬局もやってもらえるかな」ーー。先日、近隣の診療所の医師から、そんな打診があった。

 筆者の薬局のある地域では、12月に入り行政から診療所などに対して、年末年始の発熱患者などの診療体制の確保に関するお願いの文書が流れた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって、2020年12月29日~ 21年1月3日までの医療提供体制の確保が課題となっているという。

 以前、TREND「新型コロナ第3波 発熱患者はどこに相談?」でも紹介されていたように、発熱などCOVID-19が疑われる症状を呈する患者は現在、原則として診療・検査医療機関が診ることになっている。診療・検査医療機関に手を挙げた医療機関は、想定していたよりも少なかったと聞いているが、その中から年末年始にも継続して診療を行う医療機関を募ったのだ。

 行政は、年末年始に診療を行う上では、個別に近隣の調剤薬局と開設日や開設時間などの調整を行い、医療提供体制を整えるよう医療機関に求めたという。当薬局に連絡をくれた医師は、薬局にも都合があるだろうと考え、年末年始に開局可能かどうかを打診してくれたが、そうした配慮もなく、医師から「年末年始はクリニックを開けることにしたので、よろしく」と一方的に言われ、開けざるを得ないという薬局もあったのではないだろうか。

 それはさておき、納得できないのは行政の対応である。筆者が薬局を営む地域では、そうした年末年始の診療・検査体制の確保事業が進められていることは、薬剤師会などには知らされておらず、近隣クリニックの医師からの打診がない限り、知る由もなかった。医療機関がCOVID-19疑いの患者の診療・検査体制を整えても、門前の薬局が開いてなければ、患者は困るだろう。そうした実態をまるで無視し、薬局を全くの蚊帳の外に置いて、ことが進められていたのだ。

 他の地域でも、地区の医師会、歯科医師会、薬剤師会などが集まる定例会議の場で、医師会の代表から突然、「年末年始に発熱外来を担う診療所を募集しているので、薬剤師会さんにも協力をお願いしたい」と伝えられ、地区の薬剤師会長が驚いたという話を聞いた。

 本来なら、行政が医療機関に協力を求めるのと同時に薬局にも、診療・検査医療機関制度について説明し、年末年始についても医療機関と連携し、必要に応じて薬局を開けるよう、協力を仰ぐべきではないか。地区の医師会や診療所の医師たちが個別に協力を求めてくるのは筋が違うだろう。

 当初、薬局への協力金の話が出ていなかったのも解せない。東京都や神奈川県などでは、年末年始に発熱患者などの診療に当たる医療機関には、1日4時間で15万円の協力金が出されることが早々に決まっていたが、薬局への協力金の支給を決めたのは12月半ば過ぎになってからだ。当初は、患者が来なければ、全くのボランティアになることを覚悟しなければならなかった。それでも薬局を開けることで近隣の診療所が年末年始の発熱外来を開設でき、地域の人たちの安心につながるならいいと思っていた。

 医薬分業率が80%を超えようとしている今、薬局なしには外来医療は完結しないという現実を、行政はもう少し重く考えるべきだろう。求められれば協力を惜しまない薬局は少なくないはずだ。適切な医療提供体制の構築のために薬局の存在を忘れないでいただきたい。 (雨垂石穿)

連載の紹介

Inside Outside
薬業界に精通した薬剤師が匿名で薬局・薬剤師に関わる諸問題を自由に論じます。(このコラムは「日経ドラッグインフォメーション」で連載されている同名のコラムの転載です。本コラムに関するご意見・ご要望は、「お問い合わせフォーム」にてお送りください)

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