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「適宜増減」を適宜考える

2015/08/11

 本年度の第1期の実務実習が7月に終了しました。実習を担当された指導薬剤師の皆さんの感触はいかがでしたか? 実習生たちには、数え切れないほどの知識と「薬剤師の志」という贈り物を手渡したことと思います。

 市内の薬局で実習していたS君。勉強熱心で人懐っこい学生でした。集合研修のSGD(スモールグループディスカッション)にも積極的に取り組む姿勢は、とても頼もしく感じました。そんな彼と先日、以下のようなやり取りをしました。

添付文書を読んでみよう!
S君:「アレグラ(一般名フェキソフェナジン塩酸塩)錠の【用法及び用量】は、添付文書では1回60mgを1日2回経口投与とされていますが、先日来局したアレルギー性鼻炎の患者さんの処方箋では、アレグラ錠60mgが1回2錠で1日2回経口投与になっていました。こうした処方は一般的なのでしょうか」

:「なるほど、通常量の2倍処方されていたから気になったわけだ」

S君:「普通の体格の方でしたが、いつもより症状が強かったとのことでした」

:「添付文書の【用法及び用量】に、『適宜増減』の文言はあったかい?」

S君:「ちょっと待ってください。今、スマホで確認します」

 S君は自分のスマートフォンの「お気に入り」に登録している医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトから、わずか10秒ほどでアレグラの添付文書を開き、私に見せてくれました。

S君:「ありました。【用法及び用量】の最後の行に、『なお、症状により適宜増減する』と書いてあります」

:「添付文書で適宜増減を認めているわけだから、保険医療では問題がないということになるね」

S君:「わかりました。では、添付文書に適宜増減と書いていない場合はどうなるのですか?」

:「保険調剤に当たって、疑義照会の義務が生じることになるね」


臨床成績を見てみると…
:「ところで、せっかく添付文書を開いているのだから、【臨床成績】の項目も読んでごらん」

S君:「はい。国内と海外の臨床試験成績が載っています」

:「その中の慢性蕁麻疹と季節性アレルギー性鼻炎の成績を見てごらん」

S君:「国内臨床試験の慢性蕁麻疹では10mgと60mg、季節性アレルギー性鼻炎ではプラセボと60mgの比較が表になっています。海外臨床試験では慢性蕁麻疹と季節性アレルギー性鼻炎のどちらもプラセボと60mgの比較が表になっています」

:「そして、その結果は?」

S君:「これら4つの全ての試験において、症状スコアの有意な減少が示されています。この結果から【用法及び用量】の項に記されている通り、60mgが処方されるわけですね」

:「そうだね。しかし、それぞれの試験結果の表には注意書きがあることに気づいたかな?」

S君:「ありました。この小さな字体の文章ですね」

:「ちょっと読んでごらん」

S君:「国内試験には、『上記試験において慢性蕁麻疹は1回10mg、60mg、120mgの1日2回投与、季節性アレルギー性鼻炎はプラセボ、1回60mg、120mgの1日2回投与の3群比較で実施されたが、解析結果には慢性蕁麻疹は10mgと60mgの比較のみを、季節性アレルギー性鼻炎はプラセボと60mgの比較のみをそれぞれ示した』とあります。海外試験には、『上記海外主要試験(12~15歳を含む)はプラセボを対照として3~4用量を用いて1日2回投与の比較を行っているが、解析結果にはプラセボと60mgの比較のみを示した』とあります」

:「色々な用量で試しているのに、60mgより上のデータは省略してあるというわけだね」

S君:「そうですね……。何だか気になります。省略してあるデータを見てみたいです」

添付文書からインタビューフォームへ
:「そんなときは『インタビューフォーム』を読んでみよう。インタビューフォームは添付文書よりも情報量が多いから、スマホではなく、そこのパソコンを使って調べてごらん」

S君:「ありがとうございます。パソコンをお借りします」

 S君はパソコンでもスマホ同様、すぐにPMDAのサイトにアクセスし、アレグラのインタビューフォームを開きました。

:「インタビューフォームの『治療に関する項目』の『検証的試験』の項を開いてごらん。そこにある『慢性蕁麻疹』と『季節性アレルギー性鼻炎』の国内と海外のデータ(スコア変化量のグラフ)から、興味深い結果が分かるはずだよ」

S君:「60mgより上のデータが省略されずに表になっていますね」

 以下、アレグラ錠のインタビューフォーム(改訂第21版)よりグラフを引用します。

著者プロフィール

平野 道夫(まい薬局富士見店〔埼玉県富士見市〕管理薬剤師、武道家)ひらの みちお氏 1959年生まれ。城西大学薬学部卒業。埼玉県薬剤師会支部で20年以上にわたって学術部理事を務め、薬剤師や薬学生の教育に尽力。認定実務実習指導薬剤師。

連載の紹介

平野道夫の「薬局手習指南所」
毎年、実務実習生を受け入れるとともに、地区薬剤師会の集合研修の講師として地域保健、在宅医療、災害時医療、セルフメディケーション、OTC薬、薬局製剤などに関する講義を担当。「街の薬局薬剤師は、薬剤師の本質を再考して原点回帰すべき」と唱える平野氏が、薬学生や若手薬剤師への教育・指導を通じて感じたこと、考えたことをつづります。

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