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漢方薬の講義と製造実習について

2014/08/07
橋本宗明

 実務実習の集合研修では講義もしますが、ディスカッションを多く取り入れています。いわゆるSGD(スモール・グループ・ディスカッション)です。最近の学生たちは大学で訓練されているおかげだと思いますが、とてもディスカッションが上手です。全員が参加し、意見を交換し、司会係、書記係、発表係もスムーズにこなせるようです。発表された内容に指導薬剤師がコメントを加え、さらにSGDとロールプレイを繰り返していくことで理解がぐっと深まるようです。

 集合研修として行っていることの一つに、セルフメディケーションの実習があります。まずはまる1日8時間掛けて、講義を中心に、SGDやロールプレイもたくさん取り入れた研修を行います。この研修では、前半に薬局製剤の講義を行っていますが、そのうちの2時間は漢方薬の講義をします。後半は病態別のトリアージ(医薬品供給および受診勧奨)の講義を行っています。

 そして別の日に、日曜日などを利用して、こちらも8時間を掛けて調剤室で薬局製剤を実際に製造させています(写真では、この製造実習の模様を紹介していきます)。

 日本薬剤師会制定の薬剤師綱領の一番目に「薬剤師は国から付託された資格に基づき、医薬品の製造、調剤、供給において、その固有の任務を遂行することにより、医療水準の向上に資することを本領とする」とあります。この中の「医薬品の製造、調剤、供給」は薬局の三大業務と定められています。

 製造とは薬局製剤をつくることですが、大学では講義を行っていないようなので、実務実習の中で行うようにしているわけです。また、漢方薬については、大学によっては概論の講義をしているところもあるようですが、実践に即した内容はやはり現場の薬剤師が得意とするところなので、実務実習でも講義をするようにしています。

 今回は、漢方薬に関する講義の中から 印象に残ったやりとりを、少し再現してみたいと思います(これまでの複数回の講義を基に、会話を再構成しています)。

漢方薬の剤形には何がある?

私:「午前中は、薬局製剤の意義と承認、許可について解説したね。さて、午後はちょっと踏み込んだ内容に触れてみよう。まずは、薬局製剤としても扱う漢方薬。そのうち、内服の漢方薬の剤形について、どんな種類があるか挙げてごらん?」

学生A:「はい。粉薬と、錠剤と、カプセル剤があります。OTC薬ではその他に液剤もありました」

私:「そうだね、漢方製剤にはAさんの挙げたものがあるね。では次に薬価の載った本で確認してごらん」

学生B:「葛根湯だけでも3つみつけました。これは葛根湯エキス顆粒で、こっちは葛根湯エキス細粒。どちらも粉薬ですね。そして、これは葛根湯エキス錠。カプセル剤は葛根湯にはないようですが、麻黄附子細辛湯エキスカプセルというのがありますね」

私:「ところで、何か気がついたかい? 共通の文字があるよね」

学生B:「そういえば……みんなエキスという3文字がついています」

私:「そうだね。漢方のエキス剤は、水で煎じたものを濃縮、乾燥させて、ステアリン酸マグネシウム、乳糖、ショ糖脂肪酸エステル、結晶セルロース──などの添加物を加えてつくられたものだね。つまり、先ほどAさんが答えてくれたものは、漢方薬を原料としたエキス製剤の服用時の剤形というわけだ」

学生A:「漢方薬と漢方製剤の違いを意識していませんでした。私が答えたのは漢方製剤の剤形だったわけですね。では漢方薬の剤形って何があるのですか?」

私:「答えは漢方薬の名前を見るとわかるよ。最後にどんな字がついているかな?」

学生C:「葛根湯の湯(とう)、当帰芍薬散の散(さん)、桂枝茯苓丸の丸(がん)です」

私:「大正解! 他にも方や飲もあるけれど、これは湯の仲間なんだ。では、湯、散、丸の違いは何かな?」

学生C:「漢方薬の粉をお湯に溶かして飲むから湯で、そのまま粉で飲むのが散、丸は……」

私:「C君は、漢方エキス製剤のコナを頭に浮かべていないかい?」

学生C:「そうです。漢方エキス製剤の剤形ではなく、漢方薬の剤形を考えろと言われたのに、漢方エキス製剤の葛根湯というコナ、当帰芍薬散というコナ、桂枝茯苓丸というコナを頭に浮かべてしまいました……」

 学生たちはこのように、漢方薬と漢方エキス製剤の区別が付いていないことがよく見受けられます。

湯、散、丸は製造方法の違い

私:「実は、湯、散、丸というのは、製造方法のことなんだ。○○湯は構成生薬を刻んで混ぜ合わせたものを水で煎じて抽出した液剤であり、当然、煎じた後に生薬は捨ててしまう。○○散は構成生薬を粉末にして混合し散剤にしたものなので、生薬そのものを全て服用することになる。○○丸は○○散と同様に製した散剤に、水分を飛ばした蜂蜜を加えて固め、丸剤にしたものだよ」

学生C:「湯、散、丸は漢方薬の名前に過ぎないと思っていました。医療用やOTC薬のエキス製剤では、みんな同じ粉薬だったりするので、特に意識はしていませんでした。作り方の違いが剤形の違いとして名前になっているのですね。でも作り方が違うことにどんな意味があるのですか?」

著者プロフィール

平野 道夫(まい薬局富士見店〔埼玉県富士見市〕管理薬剤師、武道家)ひらの みちお氏 1959年生まれ。城西大学薬学部卒業。埼玉県薬剤師会支部で20年以上にわたって学術部理事を務め、薬剤師や薬学生の教育に尽力。認定実務実習指導薬剤師。

連載の紹介

平野道夫の「薬局手習指南所」
毎年、実務実習生を受け入れるとともに、地区薬剤師会の集合研修の講師として地域保健、在宅医療、災害時医療、セルフメディケーション、OTC薬、薬局製剤などに関する講義を担当。「街の薬局薬剤師は、薬剤師の本質を再考して原点回帰すべき」と唱える平野氏が、薬学生や若手薬剤師への教育・指導を通じて感じたこと、考えたことをつづります。

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