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薬剤師業界の“タブー”への取り組みを伝え続けた意味

2020/12/28
狭間 研至

 最近は、あまり使わなくなってきていましたが、私は自分の講演の冒頭で、「AKYで話すけど許してほしい」ということを最初に断って話を始めていました。

 「AKY」とは、「あえて(A)空気を読まない(KY)」という言葉の頭文字で、KYな発言をきっとするけれども、それは「あえて自覚しつつ」やっているから、多少きついように聞こえても、真意を酌んでほしいという意味合いで使っていました。

 ただ最近は、このように伝えることは少なくなりました。それはなぜかと考えていた時、ちょっと気が付いたことがあるので、皆さんとシェアしたいと思います。

 なぜ、「AKY」と連呼していたのかと考えてみると、幾つか理由があることに気付きます。

 1つは、薬剤師業界ではタブーと思われていることに取り組んでいるらしいということを、鈍感な私でもうすうす感じ始めていたからです。

 振り返ってみれば、薬剤師はヒトの身体に触れてはならない、という「都市伝説」が広く固く信じられている時に、ふらっとやってきて「薬剤師も聴診器を持って血圧も測れるようになるべきだ!」と口走ったものですから、大層驚かれたと思います。特に、地域の薬剤師会の講演に呼ばれて、隣のヒトの脈拍を測る体験付きの講習会をやった時には、ドン引きされることも少なくありませんでした。

 また、薬剤師は、医療機関から発行された処方箋を患者さんが薬局に持ち込むところからスタートし、薬を早く正しく調製して、分かりやすい説明とともに患者さんに渡すというのが仕事であり、ビジネスモデルであるというのが常識の業界でした。そこへ、「患者さんが来るのを待つのではなく、こちらから行きましょう!」と言ったり、「渡すまでではなく、飲んだ後までフォローすべきだ」と主張したりしたのです。面と向かって色々と言われることはなかったものの、「それはいくら何でもむちゃやわ」と言われているという噂はそれとなく入ってきましたし、実際、自分の薬局ではむちゃばかりしてきたなと思います。

 さらに、薬剤師が思うように活動できないのは、医師の聞き分けが悪かったり、医師会の横やりがあったりするせいに違いない、という他責的な話が浸透している中で、「薬剤師の社会的評価や認知度は不当に低いが、その責任の一端は薬剤師にもある」ということを遠慮せずに言ったために、私の言動を快く思わなかった方も少なくなかったのだろう(過去形ではないかも!?)と思います。

著者プロフィール

狭間研至(ファルメディコ株式会社[大阪市北区]代表取締役、思温病院[大阪市西成区]理事長)
はざま けんじ氏。薬局の息子として育ち、大阪大学医学部を卒業して外科医に。2004年、同大学大学院医学系研究科臓器制御外科(博士課程)修了と同時に、実家の薬局を継承。薬局経営を続けながら、医師としては在宅療養診療所勤務を経て、17年1月より思温病院(大阪市西成区)の理事長に就任。薬剤師生涯教育、薬学教育にも積極的に取り組んでいる。

連載の紹介

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」
「日本の地域医療をこれまで以上に機能させるには、薬局・薬剤師が第3世代(=3.0)に進化することが不可欠」という持論を持つ狭間氏。薬局経営者として、時に臨床医として、多忙ながらも充実した日々を送る狭間氏が、日常のちょっとした場面を切り取りながら、次世代の薬局や薬剤師のあり方を発信します。

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