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「対面撤廃」「常駐業務廃止」のインパクト

2020/10/14

 新しい政権になって、「押印の廃止」がやや唐突な形で規制改革のアドバルーンのように上がりましたが、それに続いて、政府の規制改革推進会議で今後議論していく具体的項目および工程表の検討が始まりました。

 報道によれば、

(1)押印廃止
(2)書面・対面の撤廃
(3)常駐・専任業務の廃止
(4)税・保険料払いのデジタル化
 ――という4段階の工程表のようですが、いずれも、医療、薬局の業界と関わりが深そうです。

 第1段階にある押印に関しては、医療現場でも印鑑をたくさん押しますよね。診断書などには印鑑が必要ですし(その多くは三文判!)、薬局では、調剤印、さらには、居宅療養管理指導などの契約書にも印鑑が必要です。これらがなくなれば、業務の簡素化、効率化は進んでいくと思われます。

 第2段階にある「対面」については、診療・服薬指導において義務である項目として金科玉条とされてきました。しかし、オンライン服薬指導の解禁もあり、少し進むだろうと思われてきたところの、時限的・特例的な措置としての0410事務連絡、さらにはその恒久化です。これは、3つの観点で大きなインパクトがあります。

 1つ目の観点は、春頃から申し上げていますが、自宅→病院→薬局→自宅・・・という、いわゆる“Golden Triangle”が薄れていくということです。立地依存型対物業務専業薬局たる、いわゆる「調剤薬局」の売り上げは、客数×客単価ですので、ビジネスモデルとして根本的な見直しが必要になります。

 2つ目は、患者さんにとって薬局選びの新しい基準ができるということです。Golden Triangleがなくなった今、患者さんは薬局選びの基準を模索し始めています。

 もちろん、アクセスや利便性という人もいるでしょうし、それこそ服用後のフォローを重視する人もいるでしょう。前者なら、大手のドラッグストアや調剤チェーンの駅ナカ薬局などがあたるかもしれません。後者なら、本コラムでもお話してきたような、「薬剤師は薬を出した後が勝負」的な活動が、功を奏することになるでしょう。また、わざわざ医師にかからずに薬局で済まそうとするパターンが出てくることもあるでしょうが、そのときにはセルフメディケーション、すなわちOTC薬の活用が必要になりますので、そういったニーズに対応することが、薬局選びのキーになるかもしれません。

 3つ目は、「時間と空間のギャップを乗り越える」というオンラインの特性を生かせば、今まで移動による時間やコストを基に躊躇(ちゅうちょ)していたサービスのあり方や採算性が一気に向上します。

 その代表は、面分業の処方箋と在宅患者さんの処方箋への対応だと思います。患者側からしてみれば、大病院の門前でなくても後で自宅で服薬指導というニーズが出てくるかもしれません。また、薬剤師側からしてみれば、往復1時間かかるところにいる患者さんにも永続的に対応できる仕組みが組みやすくなるだろうと思います。

 また、同じ第2段階に盛り込まれている「書面の撤廃」が進めば、介護保険の重要事項説明書についてもデジタル化され、契約の説明はオンラインに可能になり、押印も廃止されるのならそれで契約成立ということになり、業務の効率化はさらに進むでしょう。

 そして、第3段階の「常駐・専任業務の廃止」ということが進めば、「薬剤師は常に薬局にいなければならないので、1人薬剤師は在宅訪問に出られない」とか、「管理薬剤師はその店舗の管理をしなければならないので、他の薬局で業務を行うことはできない」といった現状も変わっていく可能性があります。

 さらに、第4段階にあるマイナンバーカードの普及とともに、支払いの電子決済化が進めば、オンラインでのサービス提供による決済を同時に済ませられ、オンラインによる業務の現実的課題が解決することになります。

 これらはいずれも、立地依存型対物業務専業薬局としてのあり方を大きく変えると同時に、薬剤師の業務のあり方も変えるのだと思います。

 時代はすごい勢いで動いています。では、薬局経営者・薬剤師が、このような変化に対応していくためにはどのようなことを意識していく必要があるのでしょうか。次回連載では、薬局が考えていくべき「4つの売り上げ」について解説したいと思います。

著者プロフィール

狭間研至(ファルメディコ株式会社[大阪市北区]代表取締役、思温病院[大阪市西成区]理事長)
はざま けんじ氏。薬局の息子として育ち、大阪大学医学部を卒業して外科医に。2004年、同大学大学院医学系研究科臓器制御外科(博士課程)修了と同時に、実家の薬局を継承。薬局経営を続けながら、医師としては在宅療養診療所勤務を経て、17年1月より思温病院(大阪市西成区)の理事長に就任。薬剤師生涯教育、薬学教育にも積極的に取り組んでいる。

連載の紹介

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」
「日本の地域医療をこれまで以上に機能させるには、薬局・薬剤師が第3世代(=3.0)に進化することが不可欠」という持論を持つ狭間氏。薬局経営者として、時に臨床医として、多忙ながらも充実した日々を送る狭間氏が、日常のちょっとした場面を切り取りながら、次世代の薬局や薬剤師のあり方を発信します。

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