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調剤料の引き下げは業界大変革を引き起こす?

2019/10/08

 中央社会保険医療協議会(中医協)で、いよいよというか、やはりというか、調剤料の見直し(=引き下げ)の議論が始まりました。14日以内は日数に応じて調剤料が上がっていく現状について見直すべきだとの意見が出たようですが、今春に公表された財務省や内閣府の資料にあった通りの流れだと思います。

 ある程度、議論が行われるとは思いますが、恐らく激変緩和措置を講じながらも、このトレンドは変わらないでしょう。だとすると今後、調剤料の見直しによる数百億円か数千億円(まで行きますかね!?)のお金を、調剤報酬のどの項目に乗せるのか、つまり薬剤師のどのような業務に移すのかが焦点になっていくと思います。少々大げさかもしれませんが、このことが日本の地域医療における薬物治療の質を決めることになるのではと感じています。ここでは、私の極めて個人的な考えをお示ししたいと思います。

 基本的なトレンドとしては、2015年に厚生労働省から発表された「患者のための薬局ビジョン」にあるように、薬剤師の業務の重心は、対物業務ではなく対人業務へシフトするということになると思います。すなわち、お薬をお渡しするまでではなく、服用後までフォローし、薬学的にアセスメントした後、前回処方の妥当性を評価します。必要であれば、さらに良い薬物治療を行うためにはどのようにすればよいのかを、薬学的見地から考えます。そして、それらの情報を医師にフィードバックして、次回処方の内容を決めていくという医薬協業サイクルを回すためには、3つの要素が必要です。

 1つ目の要素は、薬剤師が患者の状態を知るための、知識、技能、態度です。薬剤師が服用後を見るといっても、「look」するわけではありません。コンプライアンス、効果、副作用という3つの項目を見て、薬剤師でしか行えない薬学的アセスメントをするためには、問診やバイタルサインを活用して患者の状態を知り、薬学的に考え、その内容を医師にフィードバックするという経験を積まなければなりません。

 2つ目の要素は、薬剤師が「対人業務」を行うために、時間・気力・体力を確保できるような業務システムを構築しておくことです。人手不足が慢性化し、残業を余儀なくされているような「対物業務」で手いっぱいの状況では、新たに服用後のフォローを基本業務に組み込むことは不可能です。

 この問題を解決するためには、(1)現在の業務フローを改めて整理する、(2)積極的な機械化とICT化を進める、(3)薬剤師免許を持たない薬局スタッフ(Co-Pharmaceutical Staff:CPS)が、「業務的には重要だが、薬学的専門性はない」部分を担う体制を整備する――ことが必要です。この(3)については、今まで「法的にグレーでは?」という懸念もありましたが、2019年4月2日に厚労省から「調剤業務のあり方について」の通知(いわゆる0402通知)が発出され、状況は大きく変わっていくでしょう。

 そして3つ目の要素は、調剤報酬を対物業務から対人業務にシフトすることです。いくら薬剤師教育が6年制に移行し、ポリファーマシー対策やプライマリケアの領域で活躍できる素地を整え、業務フローの最適化を行ったとしても、その業務の持続性を担保するためには、お金の問題は極めて重要です。

 私も、自分が経営するハザマ薬局で、主には在宅業務の現場で、対物業務から対人業務へとシフトし始めた時に採算が一気に悪化するという問題に直面しました。また、薬局経営者向けのセミナーを3年ほど開催してきましたが、ここでもネックになっていたのは「そこまでやってしまうと、採算が取れないのではないか」という点でした。やはり報酬体系が変わらなければ、本格的に対人業務に取り組むことは不可能です。

 これら3つの要素を時系列に見ると、1つ目の要素は、薬剤師教育が6年制になったことを受けて、10年以上前から続いてきた流れだと思います。2つ目の要素は、機械化・ICT化の進展に加えて、0402通知によって潮目が変わりました。そして、ここにきて調剤料の議論をきっかけにした調剤報酬の大きな変化――3つ目の要素である対物から対人へのシフトが起ころうとしています。

 業界大変革の時が来たのかもしれませんね。

著者プロフィール

狭間研至(ファルメディコ株式会社[大阪市北区]代表取締役、思温病院[大阪市西成区]理事長)
はざま けんじ氏。薬局の息子として育ち、大阪大学医学部を卒業して外科医に。2004年、同大学大学院医学系研究科臓器制御外科(博士課程)修了と同時に、実家の薬局を継承。薬局経営を続けながら、医師としては在宅療養診療所勤務を経て、17年1月より思温病院(大阪市西成区)の理事長に就任。薬剤師生涯教育、薬学教育にも積極的に取り組んでいる。

連載の紹介

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」
「日本の地域医療をこれまで以上に機能させるには、薬局・薬剤師が第3世代(=3.0)に進化することが不可欠」という持論を持つ狭間氏。薬局経営者として、時に臨床医として、多忙ながらも充実した日々を送る狭間氏が、日常のちょっとした場面を切り取りながら、次世代の薬局や薬剤師のあり方を発信します。

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