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2020年度調剤報酬改定に今から備えよ

2019/04/30

 調剤業務に関する「0402通知」は、薬剤師・薬局にとって、法律でも省令でもなく、通知がもたらすインパクトとしては、過去最大級ではないかと思います(関連記事:「厚労省、非薬剤師でも可能な調剤業務を明示」)。

 対物業務の重要性は変わりません。しかし、機械化や情報通信技術(ICT)化により、その重要度に対する調剤報酬は見合わなくなっています。一方で、高齢化の進展を背景に、多剤併用、それに伴う有害事象や残薬の問題など、薬にまつわる健康被害や経済負担はますます大きくなってきました。

 その解決策の1つとして、薬剤師がお薬をお渡しするまで(対物業務)ではなく、患者さんがきちんと服用できているか(コンプライアンス)、症状は改善しているのか(効果)、有害事象が起こっていないのか(副作用)をチェックし、もし、それらに課題があったときには薬学的にアセスメントして医師にフィードバックすることで患者をよくする(対人業務)ことにシフトすることだと考えてきました。

 ただ、これを実行しようとすると、採算性と労務管理に重大な疑義が生じます。なぜなら、現在の対物業務でも残業を余儀なくされている薬剤師が、対人業務も担当するとなると、残業時間がさらに増えることで人件費は高騰するだけでなく、慢性的な薬剤師不足にあえぐ薬局業界では新しい人材を投入することも容易ではないため、残業時間に歯止めが効かなくなり、働き方改革の時代に逆行するような形になってしまうからです。

 そのような中で発出された今回の「0402通知」は、調剤業務を整理して対物業務の効率化への道を開くものと位置付けることができます。さらに、現在、国会に提出されている薬機法等改正案では、薬剤師に薬剤交付後も継続して患者の状態をフォローする義務を課し、それらの情報やアセスメントを医師にフィードバックすることを努力義務とする方向が示されています。

 さらに4月23日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会で提示されたように、2020年度調剤報酬改定で、調剤料の考え方が「0402通知」も踏まえてドラスティックに変わる可能性があります(関連記事:「財務省、『0402通知』引用し調剤料下げに言及」)。調剤料が引き下げられる一方で、薬剤師による継続的フォローの評価が一気に上がるとすれば、薬局経営の採算性の観点からも、対物業務から対人業務へのシフトは急速に進むのではないでしょうか。

 とはいえ、「0402通知」以後の薬剤師業界の反応は、あまり芳しくないように思います。私自身も、直接的・間接的に色々な意見や反応を耳にしていますが、いずれも否定的なものが多いのが現実です。

 確かに、現在まで自分が取り組んできた業務が、ある意味では否定され、その金銭的評価まで下がるとなると、憤りを感じるのは当然です。しかし、厳しい言い方をするようですが、従来のやり方に捉われ、社会のニーズや環境の変化に目を向けることなく、自らの考え方や行動を変えないというのも、また、困ったことであるのも事実です。

 いずれにしても、この半年間くらいは業界はざわつくのでしょうが、2020年度調剤報酬改定の概要が発表されれば、業界は動かざるを得ないのではないかと予想します。このパラダイムシフトを乗り切るためには、薬剤師は以下の3つを今から準備しなくてはなりません。

著者プロフィール

狭間研至(ファルメディコ株式会社[大阪市北区]代表取締役、思温病院[大阪市西成区]理事長)
はざま けんじ氏。薬局の息子として育ち、大阪大学医学部を卒業して外科医に。2004年、同大学大学院医学系研究科臓器制御外科(博士課程)修了と同時に、実家の薬局を継承。薬局経営を続けながら、医師としては在宅療養診療所勤務を経て、17年1月より思温病院(大阪市西成区)の理事長に就任。薬剤師生涯教育、薬学教育にも積極的に取り組んでいる。

連載の紹介

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」
「日本の地域医療をこれまで以上に機能させるには、薬局・薬剤師が第3世代(=3.0)に進化することが不可欠」という持論を持つ狭間氏。薬局経営者として、時に臨床医として、多忙ながらも充実した日々を送る狭間氏が、日常のちょっとした場面を切り取りながら、次世代の薬局や薬剤師のあり方を発信します。

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