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変わることは、とても簡単、でも、とても難しい

2018/07/23

2日目7時30分からのモーニングセミナーが満席・立ち見となりました。演者の先生も驚いておられましたが、ある意味、本学会の特徴かと思いました。

 去る7月15日、16日と大阪で第11回日本在宅薬学会学術大会が開催されました。2009年の設立当初は、1日のフォーラムを年2回開催していましたが、3年目から2日間の年次学術大会に変更しており、9年目の今回が第11回を数えます。

 当初は、50人の参加者のうち25人は内輪のメンバーという規模でスタートしましたが、今年は、延べ1300人を大きく上回る方にご参加いただき、活発な議論が繰り広げられました。私は自分の任務をこなしながら(?)、幾つかの会場に顔を出して色々な発表や議論を聞きました。また、会場では以前からの知り合いだけでなく、初めてお目にかかる方とも色々とお話ししました。

 そんな2日間の学会で気が付いたことがあります。それは、「薬剤師が変わることは、とても簡単だが、それと同じくらい、とても難しい」ということです。何を言っているんだ!?と思われるかも知れませんが、私の実感なのです。

 まず、薬剤師が変わることはとても簡単です。それは、薬を渡すまでではなく、飲んだ後までフォローしさえすれば良いのです。例えば、「これは便秘のお薬です」と薬を渡した後、その患者さんが次に処方医の診察を受ける前までに「その後、出ましたか?」などと聞いてみるといったことです。

 「それだけ?」と思われるかもしれませんが、たったこれだけのことで、薬剤師が現在感じている閉塞感は、瞬時にして解消できるでしょう。実際、私が学会会場で見聞きした話の中で、生き生きと活動している薬剤師は、すべからく薬を飲んだ後まで患者さんをフォローしていました。その一方で、やや悶々とされている方は、渡すまでのところしか担当されていないと感じるケースがほとんどでした。

 では、飲んだ後までフォローすると、なぜ閉塞感が打破されるのでしょうか。理由は2つあります。

 1つは、薬剤師が学んできた薬理学、薬物動態学、製剤学といった薬学のコアな概念は、飲んだ後に薬が体内でどのような作用を及ぼすかを、時間軸とともに考える時にこそ役立ちます。便秘の薬についても、服用後の状態をフォローすることで、薬剤師しかできない問題解決に向けた専門的なアセスメントや、それに基づくアドバイスができます。

 もう1つは、そもそも薬剤師としてやりたかったのは、患者さんに薬を単に交付することではなく、その薬で患者さんを良くすることではないでしょうか。「患者さんを良くする」という医療従事者共通の願いを、図らずも叶える体験ができます。

 言葉を換えれば、今の薬剤師が抱える閉塞感のもとである、専門性のゆらぎと達成感の少なさを一気に解決できるのが、飲んだ後までフォローすることなのです。

著者プロフィール

狭間研至(ファルメディコ株式会社[大阪市北区]代表取締役、思温病院[大阪市西成区]理事長)
はざま けんじ氏。薬局の息子として育ち、大阪大学医学部を卒業して外科医に。2004年、同大学大学院医学系研究科臓器制御外科(博士課程)修了と同時に、実家の薬局を継承。薬局経営を続けながら、医師としては在宅療養診療所勤務を経て、17年1月より思温病院(大阪市西成区)の理事長に就任。薬剤師生涯教育、薬学教育にも積極的に取り組んでいる。

連載の紹介

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」
「日本の地域医療をこれまで以上に機能させるには、薬局・薬剤師が第3世代(=3.0)に進化することが不可欠」という持論を持つ狭間氏。薬局経営者として、時に臨床医として、多忙ながらも充実した日々を送る狭間氏が、日常のちょっとした場面を切り取りながら、次世代の薬局や薬剤師のあり方を発信します。

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