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利益の約1割が吹っ飛ぶ基準調剤加算の廃止

2018/01/11

 報道にもあるとおり、2018年1月10日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、2018年度の診療報酬改定に関するこれまでの議論について整理案が示されました。

 DI Onlineでも記事になっていますが(2018.1.11「基準調剤加算が2018年度改定で廃止へ」)、詳細については厚生労働省のサイトで公開されている資料(「平成30年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案)」)をご確認いただくのがよいと思います。「いよいよ来たか!」という気持ちが正直なところなので、今回は現状を皆さんとシェアしておきたいと思います。

 やはり、今回の整理案で最も大きなインパクトは、基準調剤加算(32点=320円)の廃止ではないかと思います。

 基準調剤加算は、一定の基準を満たせば無条件で算定することができるので、経営的にも極めて重要な点数です。例えば生活習慣病の患者に3~4剤が14日処方された場合の処方箋1枚当たりの粗利は3000円前後であり、利益の約1割がなくなるというのは強烈なインパクトです。

 私が運営する薬局でも7店舗全店で算定しています。現在、弊社では月間1万2千枚程度の処方箋を応需していますが、基準調剤加算がなくなるということは、月間400万円、年間にして5000万円近くの売り上げ(しかも、原価はありませんから、そのままが粗利)が吹き飛ぶ計算になります。これは、正直、背筋が寒くなる数字です。

 厚生労働省の調査によれば、基準調剤加算は約3割の薬局が届けているそうで、当社と同じような印象を持っている薬局も少なくないと思います。今後、調剤基本料の特例廃止、調剤料・一包化加算の見直しなどが見込まれることも考えれば、従来から明らかにされていた「調剤報酬を抜本的に見直す」「病院前の景色を変える」という方針が、いよいよ現実のものになっていくのでしょう。

 病院の近くに店舗を構え、モノをいかに早く、正確にとりそろえ、その内容を懇切丁寧に説明する行為を積み重ねることの重要性は今後も変わりません。しかし、今回の整理案で明らかになったのは、そこに評価(お金)がつかなくなるということです、

 一般論として、コストの問題は業務の効率化、機械化によって改善されるものです。薬の調剤についても同様です。ただ、いかに機械化やICT化を進めても、「薄利多売」というビジネスモデルの観点で採算を合わせることができるほど、そこまでコストを下げるのは簡単ではありません。

 だとすると、どうするのか――。薬剤師は、薬を渡すまでを担当する「対物」的な仕事から、患者さんの状態を良くするまでを担当する「対人」的な仕事にシフトすることが大切なのだと思います。これは、すなわち、多剤併用や薬剤性有害事象の回避、ひいては医薬品の適正使用、医療安全の確保という使命を果たすことになります。

 実際、2018年度改定において、対物業務の(コスト上の)引き下げによって生まれた原資は、多剤併用・薬剤性有害事象という国民の不利益を解消するために薬剤師を機能させるべく、当然、対人業務の充実に向けられるでしょう。そして薬局の採算性(=事業の継続性)を考えると、そこに薬剤師の仕事を向けていかなければなりません。薬局のビジネスモデルは、まさに根本的に変わっていくのだと思います。

著者プロフィール

狭間研至(ファルメディコ株式会社[大阪市北区]代表取締役、思温病院[大阪市西成区]理事長)
はざま けんじ氏。薬局の息子として育ち、大阪大学医学部を卒業して外科医に。2004年、同大学大学院医学系研究科臓器制御外科(博士課程)修了と同時に、実家の薬局を継承。薬局経営を続けながら、医師としては在宅療養診療所勤務を経て、17年1月より思温病院(大阪市西成区)の理事長に就任。薬剤師生涯教育、薬学教育にも積極的に取り組んでいる。

連載の紹介

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」
「日本の地域医療をこれまで以上に機能させるには、薬局・薬剤師が第3世代(=3.0)に進化することが不可欠」という持論を持つ狭間氏。薬局経営者として、時に臨床医として、多忙ながらも充実した日々を送る狭間氏が、日常のちょっとした場面を切り取りながら、次世代の薬局や薬剤師のあり方を発信します。

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