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薬学部の講義にいそいそと出向くワケ

2016/05/30

 ありがたいことに、そして、自分の学生時代を振り返ると恐ろしいことに、薬学生さんにお話をさせていただく機会がしばしばあります。

 毎日、何やかやと仕事がある中で、薬剤師向けの研修会と異なり、「講義」は平日の昼間に行われるため、場合によっては、自分の外来日であったり、朝の講義のために前日夜に現地に到着する必要があったりするので、スケジュール調整が必要になります。それでも、いそいそと出掛けて行きます。

 なぜ、いそいそと出掛けて行くのか。

 それは、自分自身が25年ほど前の学生時代に受けた講義の中で、今も覚えているほど強烈なインパクトを受けた講義があり、その後の自分の人生を変えたからです。外部講師ですし、多くの学生さんにとっては出席数を満たすため、という理由だと思いますが、それでも、ひょっとすると、私の講義で何かを感じ、10年後、15年後、25年後に、「そういえば、今、こういう風に働いているのは、大学の時に、なんかよくしゃべってた先生の話を聞いたからかも…」と思う人がいるかも知れない、と期待してしまうのです。教員でない私には、そんなチャンス、なかなか、ありません。だから、そういう機会があれば、いそいそと出掛けて行くのです。

 学生さんの講義は、薬剤師向けの講演とちょっと風情が異なります。これまたありがたいことですが、最近、薬剤師向けの講演会では、私が講師を担当するということがあらかじめアナウンスされていて、「在宅の話かな?」「バイタルサインの話かな?」という風に、ある程度の予備知識を持った上でお越しいただくことがほとんどです。ですので、私としても、まぁ、概ね予想が付くというか、こんな感じになるんだろうな、と思いながら聞いていただくわけです。

 しかし、学生さんは違います。とりあえずいつも通り、講義室に友達と一緒にぞろぞろと来るわけで、今日、誰がしゃべるのか、それがどんな人なのかは、講義を企画してくださった大学教員の先生の思惑とは関係なく、基本的には何も知らず、興味もないわけです。

 ですので、最初の4~5分で僕の簡単な自己紹介を始めると、鳩が豆鉄砲を食ったような感じになります。そして、“Honeymoon time”の最初の10分で興味を持ってもらえたら、後は薬学生や薬剤師が感じているであろう、いろいろなジレンマや閉塞感を話し、薬剤師とは何か、薬学とはどういう学問か、そして、医療全体の問題を解決すべく、どのような役割や使命を果たしていくべきか、ということをお話します。このような話をしているとき、多分、一番楽しんでいるのは僕だと思うのです。何度も、同じ内容をお話しているのですが、自分が飽きないし、楽しいし、ドキドキ、ワクワクします。おめでたいといえば、おめでたいですよね。

著者プロフィール

狭間研至(ファルメディコ株式会社[大阪市北区]代表取締役、思温病院[大阪市西成区]理事長)
はざま けんじ氏。薬局の息子として育ち、大阪大学医学部を卒業して外科医に。2004年、同大学大学院医学系研究科臓器制御外科(博士課程)修了と同時に、実家の薬局を継承。薬局経営を続けながら、医師としては在宅療養診療所勤務を経て、17年1月より思温病院(大阪市西成区)の理事長に就任。薬剤師生涯教育、薬学教育にも積極的に取り組んでいる。

連載の紹介

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」
「日本の地域医療をこれまで以上に機能させるには、薬局・薬剤師が第3世代(=3.0)に進化することが不可欠」という持論を持つ狭間氏。薬局経営者として、時に臨床医として、多忙ながらも充実した日々を送る狭間氏が、日常のちょっとした場面を切り取りながら、次世代の薬局や薬剤師のあり方を発信します。

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