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「かかりつけ」という表現を考える2つの視点

2016/02/29

 2016年度調剤報酬改定では「かかりつけ薬剤師」が明示されました。「かかりつけ」というのは医師のみの話ではないかとか、薬剤師にかかりつけなんてあるのか、というような声は多々ありましたが、調剤基本料や基準調剤加算に関わるとなると、当面、これに取り組まざるを得なくなりそうです。

 勤務表を出すとか、24時間の連絡先を伝えるといった要件が示されたことで、そこまでやるか!?という話はあるかも知れませんが、別に内部で作っている具体的なシフト表を見せなさいと言っているわけではないと思います(そういうものをもらっても患者さんも困るでしょうし……)。

 ちょっと考えてみると、医師も開業医の場合には、診察予定表=勤務表は道路に向けて明示しています。病院の勤務医も、外来表は院内掲示されていますし、最近ではホームページに明記している場合がほとんどです。24時間の連絡先といっても、別にプライベートの携帯電話番号を教えなければならないわけではありません。そもそも従来から、時間外の薬局の連絡先を患者に知らせていたことを考えれば、それほど現実離れしたことではないのかもしれません。

 「かかりつけ」という表現や在り方をどう捉えるかについて、私は2つの視点で考えてみるのがよいと考えています。

「かかりつけ」は現状へのアンチテーゼ

 1つは、この2年ほどの間に議論されてきた、この国の薬局や薬剤師の方向性についてです。厚生労働科学研究費補助金による「薬剤師が担うチーム医療と地域医療の調査とアウトカムの評価研究」でまとめられ、2014年に示された「薬局の求められる機能とあるべき姿」には、薬剤師が処方箋による医薬品の調製と指導、薬歴の管理に専念するのではなく、在宅医療や一般用医薬品の適正使用などについても積極的に取り組むべきだということが示されました。

 また、2015年3月に開かれた規制改革会議の公開討論会のテーマにも取り上げられましたが、ここでは「医薬分業はすばらしい制度だが、現在の在り方は、患者の利便性やその費用対効果については検討すべき余地があるのではないか」という指摘がありました。医療機関の近隣に薬局を構え、処方箋通りの調剤を正確・迅速に行うことに薬剤師が専念することの妥当性や有効性を考えれば、やはり、変わるべきではないかということが提言されたわけです。

 さらに、2015年10月に厚生労働省がまとめた「患者のための薬局ビジョン」には、高齢化や少子化が同時に進む人口構成の変化、急性期から慢性期への疾病構造の変化なども踏まえて、薬局やそこで勤務する薬剤師に向けて「立地から機能へ」「対物から対人へ」そして「バラバラから1つへ」というキーワードが示され、2025年以後に向けても、街の薬局や薬剤師はどういった方向性に取り組むべきかということが示されたのです。

 この一連の流れで分かるのは、やはり従来の処方箋調剤業務を主業務とする薬局において、「処方箋の応需→監査→必要に応じ疑義照会→調製→服薬指導→薬歴記載」という業務に薬剤師が専念することは、「あるべき姿」とは少なからずギャップがあるということです。これは「費用対効果」の観点からも疑義が生じかねない状況となっており、「地域包括ケア」を支える薬局にマッチしているとは言えないということです。

 そういった意味で、現状の薬局・薬剤師の在り方に対する1つのアンチテーゼとして出てきたのが「かかりつけ」であり、それを具現化するために、調剤報酬制度を変えていく、という国の方向性が明確に示されたのではないかと思います。

「かかりつけ」とは何のことか?

 もう一つの視点は、「かかりつけ」という言葉の意味です。そもそも「かかりつけ」って、どういう意味でしょうか?インターネットの検索サイトで引いてみると、驚くことに「いつもその医者に診察してもらっていること。『―の医者』」(デジタル大辞泉)という風に、いくつかの辞書やサイトを引いても本来は医師にしか用いない言葉のように辞書では書かれています。

 この点から考えると、今回の調剤報酬改定で「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」という言葉を使ったのは、すごいチャレンジングなことだったのかもしれません。そして、それくらいチャレンジングなことをやらないと、この国の医療制度はいろいろな意味で継続していくことが難しくなっているということなのでしょう。

著者プロフィール

狭間研至(ファルメディコ株式会社[大阪市北区]代表取締役、思温病院[大阪市西成区]理事長)
はざま けんじ氏。薬局の息子として育ち、大阪大学医学部を卒業して外科医に。2004年、同大学大学院医学系研究科臓器制御外科(博士課程)修了と同時に、実家の薬局を継承。薬局経営を続けながら、医師としては在宅療養診療所勤務を経て、17年1月より思温病院(大阪市西成区)の理事長に就任。薬剤師生涯教育、薬学教育にも積極的に取り組んでいる。

連載の紹介

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」
「日本の地域医療をこれまで以上に機能させるには、薬局・薬剤師が第3世代(=3.0)に進化することが不可欠」という持論を持つ狭間氏。薬局経営者として、時に臨床医として、多忙ながらも充実した日々を送る狭間氏が、日常のちょっとした場面を切り取りながら、次世代の薬局や薬剤師のあり方を発信します。

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