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「6年制になって、何が変わったのですか?」

2015/01/27

 先日、薬学生向けの就職イベントの会場に足を運びました。製薬会社主催のセミナーも同時開催だったためか、200人以上の薬学生が来場、出展者も薬局や病院など30を超え、とても盛況でした。弊社もブースを出展しました。

 このようなイベントの常ですが、ブースの中に座っているだけでは誰も立ち寄ってくれません。がらがらの自社のブースで、人だかりができている向かいのブースをただ眺めているのはつらいものです。そこで、ブースの前に立ち、通路を歩いている薬学生さんにパンフレットを渡しながら「ちょっと私たちの説明を聞いていかれませんか?」などとお誘いするわけです。ただ、私も逆の立場になればそうですが、「~されませんか?」と誘われると、反射的に「いえ、結構です」と言いたくなるのが常です。勧誘には、様々なスキルやテクニックが必要だと気付かされました。

 一方、薬学生さんの多くは半笑いです。ちょっと歩いていると、皆が誘ってくれるわけですから。2~3人の女子学生が笑いながら目の前を通り過ぎていった時は、正直なところ、少し複雑な気持ちでした(当然と言えば当然なのですが)。

 そんな中、数人の学生さんが、当社のブースの椅子に座ってくださいました。そんな彼らから、興味深い話を聞きました。

 ある学生さんは、就職活動の際、薬局の採用担当者に「6年制になって、変わったことは何でしょうか?」と尋ねたそうです。すると、その採用担当者は少し間を置いて、「うーん……。4年制に比べて即戦力になったね!」と答えたのだそうです。恐らく、その採用担当者は、「君たち、現場ですぐに活躍できるよ!自信を持って、うちの会社においでよ!」と言いたかったのでしょう。しかし彼は「6年間学んだ成果が、結局、調剤業務の即戦力になるだけなんだ!?」とがっかりしたようです。

 また別の学生が、同様の質問を別の会社の方にしたところ、採用担当者から「全然変わらないね。同じだよ」との答えが返ってきて、「薬学教育が変わっても、結局、現場は変わっていないんだと思いました」と苦笑しながら教えてくれました。

 私も小さな薬局の経営者であり、薬剤師の採用は重要な仕事の一つですから、それらの会社の採用担当者の気持ちはよく分かります。そして、6年制になった意味をどう捉えるのかは、もちろん立場によって異なるでしょうし、何が正しく、何が間違っているのかということもないと思います。しかし、薬学教育が6年制になった意味を学生にどう説明するかについては、もっと深く考えておかなければならないことではないでしょうか。

著者プロフィール

狭間研至(ファルメディコ株式会社[大阪市北区]代表取締役、思温病院[大阪市西成区]理事長)
はざま けんじ氏。薬局の息子として育ち、大阪大学医学部を卒業して外科医に。2004年、同大学大学院医学系研究科臓器制御外科(博士課程)修了と同時に、実家の薬局を継承。薬局経営を続けながら、医師としては在宅療養診療所勤務を経て、17年1月より思温病院(大阪市西成区)の理事長に就任。薬剤師生涯教育、薬学教育にも積極的に取り組んでいる。

連載の紹介

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」
「日本の地域医療をこれまで以上に機能させるには、薬局・薬剤師が第3世代(=3.0)に進化することが不可欠」という持論を持つ狭間氏。薬局経営者として、時に臨床医として、多忙ながらも充実した日々を送る狭間氏が、日常のちょっとした場面を切り取りながら、次世代の薬局や薬剤師のあり方を発信します。

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