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患者の病歴、頭に入っていますか?

2014/08/21

 医学部の学生時代に病院実習で内科を回ったときのことです。朝、指定された病棟のカンファレンスルームに行くと、担当の先生から「今回、担当してもらう患者さんは、ディアベの方だから。まずは今日、アナムネ取ってきて」と言われました。

 「ディアベ?アナムネ? 何だ、それは?」というところから、その科の実習はスタートしました。ディアベというのはDiabetes Mellitus、糖尿病のことであり、アナムネというのはanamneses というドイツ語を略した言い方で病歴のことであるということを、実習班のメンバーに教えてもらいました。

 担当の先生が言っていたのは、糖尿病の患者さんに実習に協力していただくので、その方がどのような経緯で糖尿病と診断され、どういう状態で今回の入院に至ったのかということを聞いてきなさい、ということだったわけです。

 医師や看護師は、最初の患者さんに必ず病歴を聞きます。カルテにも看護記録にも、最初の方に病歴を記載する欄があるのですが、これが予想を超えてやっかいでした。

 私が実習で病歴を聞いた患者さんの中にも、戦争で満州に行った話をする人や、最初に症状が出現したことを分単位で事細かに教えてくれる人など、話し好きの方がいて、そのまま書くと病歴の欄が何ページあっても足りない状態になってしまいます。逆に、ほとんど情報を聞き出せず、「何年前に病気になりました、おしまい」といったような素っ気ない内容になることもあります。

 どちらの場合も、最初は、指導医の先生から「一体、どういう患者か全く分からんし!」と怒られます。言ってみれば、病院実習における通過儀礼のようなものかも知れません。知識や経験を積み重ねることによって、どういう患者か分かるようになってきますし、診察室や病室でも色々な疾患の可能性を考えながら、キーとなる情報をきちんと収集できるようになります。問診は、まさに、診察技法の一つであり、患者に正しい治療を行っていく上で欠かせないものです。

著者プロフィール

狭間研至(ファルメディコ株式会社[大阪市北区]代表取締役、思温病院[大阪市西成区]理事長)
はざま けんじ氏。薬局の息子として育ち、大阪大学医学部を卒業して外科医に。2004年、同大学大学院医学系研究科臓器制御外科(博士課程)修了と同時に、実家の薬局を継承。薬局経営を続けながら、医師としては在宅療養診療所勤務を経て、17年1月より思温病院(大阪市西成区)の理事長に就任。薬剤師生涯教育、薬学教育にも積極的に取り組んでいる。

連載の紹介

狭間研至の「Road to 薬剤師3.0」
「日本の地域医療をこれまで以上に機能させるには、薬局・薬剤師が第3世代(=3.0)に進化することが不可欠」という持論を持つ狭間氏。薬局経営者として、時に臨床医として、多忙ながらも充実した日々を送る狭間氏が、日常のちょっとした場面を切り取りながら、次世代の薬局や薬剤師のあり方を発信します。

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