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繰り返される患者情報の紛失から学ぶべきこと

2012/08/31

トロピカルな花が好き !! 那覇市内にて 2007年7月1日撮影。

 2012年8月28日、「岐阜大学医学系研究科博士課程に在籍する30代の男性大学院生が、患者1824人分の個人情報、2726件が入ったUSBメモリーを紛失した」という新聞報道がありました。

 報道によると、その大学院生は、22日の20時ごろから21時ごろまでの間に、市内のパチンコ店の駐車場で車上荒らしに遭い、USBメモリーの入ったかばんを盗まれました。USBメモリーには、1985年から2011年までの間に岐阜大学医学部附属病院眼科で手術を受けた患者氏名、患者ID、性別、生年月日や手術内容などのデータが記録されていたということです。その大学院生は、論文作成のために、学内のパソコンから患者データをUSBメモリーに記録していました。

 7月20日にも、兵庫医科大学から同じような事例が報告されています。兵庫医科大学病院リウマチ・膠原病科の女性研究生が帰宅途中にかばんをひったくられ、同大学病院の患者141人分のデータが記録されたUSBメモリーを紛失したというものです。

 その研究生は18日20時ごろ、駅へ向かう途中にひったくり被害に遭いました。盗まれたかばんの中には財布などのほか、患者141人の氏名、年齢や診療科名などが記録されたUSBメモリーが入っていたとのことです。財布は翌19日に見つかりましたが、かばんとUSBメモリーは見つかっていません。おそらく、財布からは現金が抜き取られ、高級ブランドのかばんは処分されていることでしょう。

 スパイ映画ではないので、車上荒らしの犯人もひったくり犯人も、USBメモリーが目的だったとは思えません。また、患者情報が記録されたUSBメモリーがかばんの中に入っていなければ、記事として特別扱いされることはないでしょう。重要なのは、岐阜大学、兵庫医科大学ともに、大学の規定で個人情報の学外持ち出しを禁止していること、そして、この2人は、理由は何であれ、ルールを破って患者データをUSBに記録して持ち出していたということです。

 過去の報道を調べてみたところ、今回紹介した2件を含めて、11年6月以降、33件の紛失事例が公表されています。公表されていない事例を含めると、相当な件数であることが推測されます。

著者プロフィール

古川裕之(医療安全システムデザイナー)ふるかわ ひろゆき氏◎雪国(福井県大野市)の生まれ育ちなのに、性格はなぜかラテン系。1975年金沢大学薬学部卒業後、同大医学部附属病院、臨床試験管理センターを経て、2010年より山口大学医学部附属病院薬剤部長。18年に退職し、現在はフリーランスの「医療安全システムデザイナー」として活躍中。趣味は、写真撮影とブラジル音楽のバンド。薬学博士。

連載の紹介

古川裕之の「STOP!メディケーションエラー」
調剤する人は調剤エラーをする。調剤しない人は調剤エラーをしない。仕事をする限り、エラーから逃れることはできませんが、エラー事例から学ぶことで、重大なエラーを避けることはできます。「メディケーションエラー」防止に向けた10年以上の取り組みを通して学んだことを、分かりやすい具体例を示しながら紹介します。
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