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新型コロナウイルス騒動で生まれた根深い偏見

2020/02/25

 テレビもインターネットも新型コロナウイルスのニュースであふれかえっている毎日、私たちの薬局では心なしかインフルエンザの患者さんが減ってきたように思えます。

 まだ完全に解明されていない新型コロナウイルスに感染しないようにという予防対策の徹底が、インフルエンザの流行を抑えているのではという意見を耳にしました。一方で、花粉症の患者さんが増え始め、マスク不足によってつらい思いをしている患者さんも増えてきました。

 さて、私事ではありますが、カナダのオンタリオ州の薬剤師免許更新、医療過誤保険更新など、色々と日本に居ながらもカナダ免許維持のため諸々の段取りをしないといけない時期になってきました。薬剤師免許更新のためには、平均年200時間カナダで薬剤師として勤務しなければいけません。私は毎年夏、カナダに帰国して夏の間だけ薬局でパート薬剤師として勤務しています。今年もそうしようと、昨年まで働いてきた色々な薬局に連絡を取り始めました。

 恒例のバイト勤務に入れそうなシフトが夏にあるか、と尋ねると、一様に「日本は新型コロナウイルス感染者がすごく増えているから、来てもらっても、感染しているかもしれないからすぐには働けないと思う」と言われ、とてもショックを受けました。中国はもちろん、日本全体が新型コロナウイルス感染国のような認識を持っているようです。ですから、私も感染者かもしれないという彼らの不安がそのような答えになってしまっているのでしょう。

 最近、パリの日本食レストランの壁に「出ていけ、ウイルス」という落書きがされたとニュースになっていましたが、欧米ではアジア人が横を通ると鼻や口を塞ぐといったアジア人差別が横行しているようです。正直なところ、私も地下鉄でスーツケースを持った中国人旅行者が咳やくしゃみをすると、つい息を止めて少し横に移動したりしてしまいます。これも、彼らが感染者かもしれないという私の偏見から来る行動です。

 医療従事者である私やカナダの同僚でさえ、こういった行為や言動を起こしてしまうのです。現在、インフルエンザによる死者数の方が圧倒的に多いのですが、これらの行為はこの未知のウイルスに感染したくないという人々の不安感から出た偏見だと言えます。また、連日のメディアの過熱した報道が人々の恐怖をあおっているのも事実です。

 この騒動で生まれてしまった偏見は、非常に根深くなってきているような気がします。1日も早く新型コロナウイルスの全容を解明するとともに治療法を確立し、人々の不安、恐怖を取り除いてほしいものです。

著者プロフィール

マイルバガナム恵美(カナダ・オタワ在住)
まいるばがなむえみ氏。1995年神戸薬科大学卒業、2004年まで薬局勤務。05年にカナダで薬剤師免許を取得後、薬局勤務。12〜15年は日本で薬局に勤務し、15年夏にカナダに戻る。カナダ糖尿病教育者。15年に『カナダで薬剤師になる!』をアマゾンKindleストアで出版。

連載の紹介

マイルバガナム恵美の「日本とカナダの薬局見聞録」
日本の薬局で働いていたときにカナダ人留学生と出会って結婚したマイルバガナム氏。ご主人とともにカナダに渡り、薬剤師免許を取得してカナダの薬局に勤務していましたが、ご主人の仕事の関係で一時帰国し、日本で薬剤師として働いていました。現在はカナダに戻り、両国の薬局の勤務経験を持つ同氏が、カナダでの免許取得の苦労話や、カナダの薬局での体験談や医療事情などをつづります。

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