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宝島社×日経DIコラボ企画
薬剤師は処方箋から病名を推測する探偵
第3話:不安な薬剤師の処方解析(6)

2021/10/18

『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)

「そういう事情ですか。でもそれなら時間になっても応答しないというのは変ですよね」

 刑部さんの話を聞き終わり、爽太は周囲を見まわした。あたりはひっそり静まり返っていて、歩いている人影も見当たらない。時計を見るとすでに六時二十分を過ぎている。

「林さんは一人暮らしですか」
「方波見さんが聞いたところではそのようですね」
「複数の薬を飲んでいるということでしたが、どんな病気を患っているんでしょう」
「それは個人情報なので言えません。というか、私たちも病名は知らないんです」
「え? 薬を出しているのに病名を知らないんですか」

 言葉の意味を測りかねて、爽太は刑部さんを見た。

「処方箋に診断名は書いてありませんから。院内処方なら情報が医師からまわってくるようですが、院外処方の場合、患者さんに直接確かめるしか、それを知る方法はありません」と刑部さんは肩をすくめて説明した。

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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