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宝島社×日経DIコラボ企画
毒島花織にミスコン準グランプリの過去
第3話:不安な薬剤師の処方解析(4)

2021/09/21

『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)

「毒島さんを一言で言えば薬オタクですね。本人は否定しますけど、私からすればそれ以外に表現する言葉は思い浮かびません」

 刑部さんはきっぱりと言った。
 会社員や学生で混み合うコーヒーショップのカウンター、刑部さんの前にはロイヤルミルクティーが湯気を立てている。

「やっぱり同じ薬剤師の目で見ても、毒島さんは特殊なんですね」
「申し訳ないですが、薬剤師というくくりだけで一緒にされると困ります。あっ、でも毒島さんを馬鹿にしているわけではないですよ。その逆で、とても真似できないというリスペクトを半分だけは込めています」

 半分は逆の感情と言うことか。

「真似できないというのは、薬の効き目を自ら試すような行動をするところですか」
 睡眠薬やホメオパシーを試してみたという話を思い出して、爽太は訊いた。

「そうです。普通はそこまではしませんよ。それ以外にも毒島さんの薬に対する入れ込み方はすごいです。四六時中、薬のことを考えています。いえ、薬だけじゃありません。スパイスやハーブのみならず、観葉植物や道端の草木まで、その成分や効能、副作用に興味をもっているような節もありますね」

 セントジョーンズワートのことを思い出す。

「すごいですね。でも本人は薬オタクと言われると否定するわけですか」
「真顔で否定されました。オタクというのは、趣味として自分の好きな事柄に入れ込んでいる人の総称であり、自分は趣味として薬に興味を抱いているわけじゃない、というのがその理由です」

「ということは薬オタクではなく、仕事中毒のような感じでしょうか」
「仕事以外の私生活も真面目ですけどね。恋人がいるような気配もないですし、成人して以来、選挙には欠かさず行っていると言ってました。私が一度も行ったことがないと言ったら、信じられないという顔をされました」

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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