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宝島社×日経DIコラボ企画
くず入れの中の未開封の軟膏
第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(最終回)

2021/05/18

『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)

「……子供に重い食物アレルギーがあります。卵や牛乳、小麦、それから果物や海産物の一部がダメで、食事にはかなり気を使っています」

「どうしてそんなことがわかるんですか」
 爽太は驚いて毒島さんに訊いた。

「さきほどホメオパシーに入れ込んでいたことがあると仰ってましたから。現代医学で完治が難しい病気にかかっている方ほど、代替医療、民間医療に入れ込む傾向があるようです。心情はお察ししますが、現代医学を否定する方向には行かないようにしてほしいのです。それで失礼を承知でそんなことを訊きました」
 プライベートに立ち入って申し訳ありません、と毒島さんは頭を下げる。

「いいえ、そんな、大丈夫です」
 南さんは手をふった。

「仰る通り、子供の病気がわかって以来、病院の治療以外に色々な民間療法を試しました。ホメオパシーもその一部です。でも効き目がなかったので、もうやめました。さっき言った通り、買い込んだレメディがもったいないので、自分で気分転換として飲んでいるだけです。今は子供に舌下免疫療法を受けさせるかどうかを悩んでいます。一定の効果が見込める半面、命にかかわる危険もあるようなので──」

「そうですか。それならいいですが」
 毒島さんは安心したように頷いた。

「実は、私もレメディを飲んでみたことがあるんです。でもこれといった効き目はありませんでした。やはり非科学的な信仰だと思います」

「飲んだんですか? レメディを」
 爽太はまた驚いた。
 さっきは様々な種類の睡眠薬を試したとか言っていたし、どれだけチャレンジ精神旺盛なんだ。この人は。

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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