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宝島社×日経DIコラボ企画
受診勧奨も薬剤師の仕事の一部
第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(13)

2021/05/04

『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)

「すごいですね。一人で大騒ぎをして行っちゃいました」
 中野さんがいなくなった控え室で爽太は思わず呟いた。

「あの人はいつもあんな感じです。ワタシはもう慣れました」
 リンさんは笑いながら言ってから、「ああ、もうこんな時間、帰らなきゃ」と時計を見て大慌てで控え室を出て行った。

「リンさん、どうもありがとう」
 南さんがその背中に声をかける。

 控え室には爽太と毒島さんと南さんの三人が残された。

「ありがとうございました。あらぬ疑いをかけられて困っていたので、話をしていただき本当に助かりました」
 南さんがあらたまって毒島さんに頭を下げる。

「気にしないでください。病気の疑いのある方に受診勧奨をすることも薬剤師の仕事の一部ですから」
 毒島さんは事もなげに言う。

「薬剤師さんの言葉だから、中野さんも聞いてくれたんだと思います。私だけだったら、本当に警察を呼んでいたかもしれません。他人の飲み物に睡眠薬を入れるなんてことを、私やパートさんがするはずないじゃないですか。でもあの人は本気でそれを疑っていたんです」と南さんはため息をつく。

「中野さんとは一緒に仕事をして長いんですか」と爽太は訊いた。

「もう七年目になりますか。悪い人ではないんですが、とにかく他人を信用しないので、一緒に仕事をしていても苦労することが多いです」

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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