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宝島社×日経DIコラボ企画
突然襲われる強い眠気の原因
第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(11)

2021/04/16

『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)

「絶対に睡眠薬ですよ。この人が砕いて混入したんです」

 中野さんが言い立てたが、毒島さんは静かに首を横にふった。

「残念ですが、これだけではそうとも違うとも言えません」

 中野さんは不満そうな顔をして、毒島さんの手から水筒を奪いとる。

「そうですか。仕方ないですね。それなら警察に連絡します」
「本気ですか」
爽太は驚いた。

「私はこの件をうやむやにしたくないんです。なんといっても危うく死にかけたんですからね。やましいことがないと言うなら、南さんにも異論はないと思います」

 中野さんは挑むような視線を南さんに向ける。
 南さんは少し怯んだ顔をしながらも、「構いません。でも警察を呼んで睡眠薬じゃなかったら、恥をかくのは中野さんの方ですよ」と言葉を返した。

「いいわよ。そこまで言うなら私だって覚悟があるわ。もしもこの水筒に睡眠薬が入っていなかったら仕事を辞めるわよ。こんな中途半端な気持ちのままで、仕事を続けていくなんて嫌だもの。とにかく白黒をつけたいの」

 そういうことだから早く警察を呼んでください、と中野さんは爽太に向かって声を出す。

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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