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宝島社×日経DIコラボ企画
睡眠薬と思しき破片の正体は
第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(10)

2021/04/06

『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)

 「それだけ見れば十分よ。いつも私に叱られているから、仕返しでそんなことをしたのよ。この人、仕事の段取りが悪くて、いつもあたふたしているの。それにパートへの対応も落第点よ。ただ優しくするばかりで、叱ることが出来ないのよ。だからパートはつけあがるばかりだわ。それが続けば仕事の質が下がって、最後はお客さんのところにつけがいく。今回の薬がなくなった件だって、つまるところそれが原因じゃない。いい加減な気持ちで仕事をしているから、お客さんの私物をなくすのよ」

 それはそうかもしれないが、しかし睡眠薬云々の話とはまた別だろう。

 「他にもこの人を疑う根拠はあるわ。この人、普段から変な薬を持ち歩いているの。仕事の合間にこっそり飲んでいるのを見たことがあるわ」

 中野さんは冷たい視線を南さんに向ける。

 「言いなさいよ。やましいことがなければ言えるでしょう。あなたがいつも飲んでいる、あの薬、レメディとかの話をしなさいよ」

 レメディとは一体何だろう。爽太は南さんの顔を見たが、口を真っすぐ結んで何も言わない。すると横に控えていた毒島さんが、「それはホメオパシーのことですか」と言った。

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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