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宝島社×日経DIコラボ企画
ステロイドの正しい塗布量は
第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(7)

2021/03/16

『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)

 三〇五号室では、美和子が苛立ちを隠そうともしないで待っていた。
 なくなった薬をホテルの費用で弁償したいが、そのためには茜を皮膚科に連れて行く必要があることを爽太は率直に打ち明けた。しかし美和子は納得しなかった。

「この子はもともと体が強くないのよ。今から病院だ、薬局だって引っ張りまわしたら、疲れて、さらに熱があがるかもしれないじゃない」と頑として自分の考えを譲らない。

「話をさせてもらってもいいですか」
 後ろに控えていた毒島さんが切り出した。
「あなた誰?」
 美和子がきつい視線を毒島さんに送る。

「薬剤師です」と毒島さんが答える。

「薬剤師って、このホテルの薬剤師ってこと?」
「いえ。近所の調剤薬局で働いている者です。お子様がアトピー性皮膚炎だと聞いて、何かのお役に立てないかと伺いました。ついては発症してから今までの流れを、ざっとでいいので聞かせてもらえませんか」
「お医者さんでもあるまいし、そんなこと訊いてどうするのよ」
「症状がわかれば、代替の薬をご提案出来るかとも思います」

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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