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宝島社×日経DIコラボ企画
「処方箋がないとお出しできません」
第2話:お節介な薬剤師の受診勧奨(5)

2021/03/01

『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)

「毒島さん、お客様ですよ」

 パソコンに向き合っていた毒島さんが顔をあげた。

「すみません。水尾です。お願いがあって来たんですが──」

 爽太は恐縮しながら、ここまで来た事情を説明した。

「──それでその薬を売っていただけないかと思って来たわけなんですが」
「なくなったのはなんという薬ですか」
 毒島さんはマスクを外してから質問した。

「これです」
 スマートフォンで検索しておいた薬の写真を見せる。
「リンドロンDP軟膏。ステロイドですね」と毒島さん。

「はい。お子さんがアトピー性皮膚炎らしいんです」

 母娘ともども困っているのでなんとかしてやりたい、と同情を乞うように頭を下げる。
 しかし毒島さんは表情を変えることなく、「残念ですが、これは処方箋がないとお出し出来ません」と口にした。

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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