
『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)
翌日、約束の時間にどうめき薬局に行くために、爽太は眠い目をこすりながら満員電車に乗った。
ぎゅうぎゅうづめの電車で潰されそうになりながら、頭の中では同じ思いばかりがぐるぐるまわった。
妹がピルを飲んでいる。それは兄としては、いささかショックなことだった。
颯子が、まさかそんな薬を飲んでいるなんて。
決まった相手がいるならまだいいのだ。しかし颯子にそんな相手はいないはずだった。
最近はお互いに遠慮して、直接プライベートの話をすることはないが、母親の口を通してそう聞いている。
しばらく前まで彼氏はいたが、夏前に別れたそうだった。