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宝島社×日経DIコラボ企画
薬の話題を探して~脳梗塞と低用量ピル~
第1話:笑わない薬剤師の健康診断(7)

2020/11/20

『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)

 その夜、自宅に帰ると、「何か飲んでいる薬はある?」と爽太は母親に訊いた。

「なによ。藪から棒に」夕食の支度をしながら、母親は怪訝な顔をする。

 薬の話題を探そうと、帰り道にスマートフォンで検索をしたけれど、出てくる話は専門的過ぎて爽太にはとても理解できなかった。自分の経験を話題にしようと思ったが、風邪薬以外の薬を飲んだ記憶もない。生まれついての健康体で、こうなったら家族を頼るしかないと考えたのだ。

「父さんは前に薬を飲んでたよね。あれって、どんな薬だっけ」
「血圧の薬のこと? お酒を控えるようになってからは飲んでないわ」

「じゃあ、母さんはどうなのさ。前によく動悸や息切れがすると言ってたじゃない」
「あれは更年期のせいだったみたい。一過性だったから、今は元気になったわよ」

「親戚でもいいから、持病があったり、薬を飲み続けている人のことを教えてよ」
「そんなこと言われても、すぐに話せることはないわよ」

 フライパンに火を入れているせいか、母は台所から出て来ようとはしない。仕方ない。半分だけ本当のことを打ち明けよう。

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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