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宝島社×日経DIコラボ企画
耐えがたい足裏の痒みの原因は
第1話:笑わない薬剤師の健康診断(1)

2020/10/06

小説「薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理」(宝島社)

 か、痒い──。水尾爽太は歯を食いしばって、襲ってくる痒みを必死に耐えた。

 親指の付け根から広がったムズムズ感は、いまや耐え難い痒みとなって足の裏全体に広がっている。すぐにでも靴と靴下を脱ぎ捨てて、思う存分に足の裏を掻き毟りたかった。しかしそれは出来ない相談だった。到着するエレベーターからは、宿泊客が引きも切らず降りてくるからだ。

 爽太はホテルのフロント係だった。25歳。大学を出て3年目のまだ駆け出しとも言える存在だ。仕事の最中、痒みに苦しむ顔を人前にさらすわけにはいかない。痒みに身をよじりながら、笑顔を作ってチェックアウトの応対をした。接客に集中している間は痒みを忘れるが、途切れて、ほっとした瞬間、それは二倍三倍になってぶり返す。爽太はフロントに立ったまま、足をもじもじさせながら、買い替えたばかりの革靴の中で、10本の指を必死に動かした。

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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