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宝島社×日経DIコラボ企画
プレゼントに選んだハーブティー

2020/09/29

『このミス』大賞シリーズ 『薬も過ぎれば毒となる薬剤師・毒島花織の名推理』(宝島社文庫)

 水尾爽太(みずおそうた)がその黒縁眼鏡の女性をはじめて見たのは、吹く風もまだ冷たい三月初旬の頃だった。

 神楽坂のホテル・ミネルヴァに勤める爽太は、その日、〈風花〉(かぜはな)という喫茶店にいた。

 ナポリタンが美味しいという噂を聞いて、一人で昼休みにやって来たのだ。午後一時を過ぎていたが、店内はまだ混んでいた。空いていた窓際の席に座り、ナポリタンとコーヒーのセットを注文する。内装は昔ながらの喫茶店といった風だった。壁にはコーヒー豆の産地を記したポスターが張られ、細長いカウンターの奥には色とりどりのコーヒーカップが並んでいる。時間つぶしにスマートフォンを見ようとポケットに手を入れた。

 しかしそこには何もない。どうやら仕事場に忘れてきたようだ。混んでいるせいか、注文した料理はなかなか来ない。手持ち無沙汰にしていると隣のテーブルの会話が耳に入ってきた。そこには若い女性の二人連れがいて、退職する同僚にどんな餞別を贈るかで揉めていた。

連載の紹介

薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理
クールで謎めいた薬剤師・毒島(ぶすじま)花織が薬と事件の真相を解き明かす、宝島社文庫の話題の小説が、日経ドラッグインフォメーションOnlineに登場。作者は、2008年「毒殺魔の教室」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞した塔山郁(とうやまかおる)氏。20年5月に続編となる「甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理」が発売。

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