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ずっと治らなかった痺れを治す「魔法の薬」

2017/10/02

 はいっ!どーも!!患者さんを「知る」ことは、QOLを向上させるために重要なことなんだと改めて感じた新井です。今回は施設に入居している86歳の女性、Aさんのお話です。このAさん、3つの口癖があります。

 1つ目は「もうお迎え来てほしい」。

 いやー、こればっかりは薬剤師としてはどうしようもありません。「大好きな鰻が食べれなくなっちゃうし、お迎えには順番があるから、Aさんはまだまだ先だよ」と、施設の看護師さんと共にお茶を濁します。

 2つ目は「手が痺れて痛い」。

 はいっ!来ました!!薬剤師として何かが出来るチャンス!

 3つ目は「身体が痒いの」。

 おっ!これも薬剤師として何かが出来るチャンス!!

 別に訴えがあるから喜んでいるわけではないですよ。訴えがないことが一番ですが、訴えがあるからには患者さんの健康に寄与しなくてはっ!

 処方内容を見ると、痺れを伴う痛みに対してリリカ(一般名プレガバリン)が、痒みに対してベナパスタ軟膏(ジフェンヒドラミンラウリル硫酸塩)が処方されていました。処方内容に問題はなさそうでしたが、Aさんの訴えに改善が見られません。

 訴えがなくならないので、施設の看護師さんからの情報を基に、Aさんの様子を観察してみました。すると、痺れと痒みをいつも両方訴えているのではなく、誰かに聞かれると、思い出したかのようにどちらか1つを訴えていることが分かりました。

「Aさん、今日は体調どう?」
「身体が痒いの…」
「手の痺れは?」
「手は痺れてない、身体が痒いの」

また別の日は、

「Aさん、今日は体調どんな感じ?」
「手が痺れて痛いの!全然治らない…。」
「そっかぁ!ちなみに身体は痒くない?」
「痒くない。手が痺れて痛い」

 あー、これ、気になったことしか訴えないパターンじゃないだろうか。もしかしたら、訴え自体が“思い込み”によるものかもしれない…。早速、処方医のところに相談に行きました。

「先生!Aさんの痺れの訴えは、本当に痺れを感じているのではなく、『痺れがある』という思い込みによる可能性があります。リリカを服用しても改善が見られませんし、副作用が怖いのでリリカは中止してみませんか?」

「そうだね、そうしても良いかもしれない。でも痺れの訴えに対してどう対応する?」

「ちょっと裏技なんですけど、塗り薬使ってみませんか」

「何々?どういうこと??」

「まず、痒みは老人性乾燥肌が原因かもしれないので、スプレータイプの保湿剤を処方してもらえませんか」

「それは大丈夫だよ。でもその薬だけだと、痺れの訴えには対応できないよね?」

著者プロフィール

新井翔(新井商事[東京都豊島区]取締役社長・exceed[大阪府八尾市]執行役員)あらい しょう氏 2007年城西大学薬学部卒業後、みよの台薬局(東京都北区)に入社し薬剤師1年目から在宅業務に携わる。田辺薬局(東京都中央区)、雄飛堂(東京都北区)勤務を経て、19年4月より現職。日本在宅薬学会評議員も務める。

連載の紹介

新井翔の「I love 在宅」
「在宅」に取り組もうとしたものの、現場の厳しさに心が折れそうになっていませんか?薬学部を卒業してから10年以上、在宅医療に体当たりで取り組んできた薬剤師の新井翔氏が、在宅医療の厳しさや喜びを現場からお伝えします。

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