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COPDにβ遮断薬は有用なのか

2020/01/21
青島 周一

 2019年10月、The New England Journal of Medicine(NEJM)誌の電子版に、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対するβ遮断薬の投与は、増悪による入院リスクを増加させる可能性がある」との結果を示した、なかなかインパクトのある論文が掲載された。今回はこの論文の概要とその結果を紹介しながら、どのような点が注目に値するのかについて考察してみよう。

 この論文は、BLOCK COPD Trialと名付けられた臨床試験の結果である【論文1】。論文タイトルからも分かる通り、本研究はCOPD急性増悪に対するメトプロロール酒石酸塩(商品名セロケン、ロプレソール他)の予防的効果を検証したプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験だ。

【論文1】Dransfield MT, et al.Metoprolol for the Prevention of Acute Exacerbations of COPD. N Engl J Med.2019;381:2304-14.(Epub 2019 Oct 20) PMID:31633896

 対象となったのは、40~85歳で中等度もしくは重度のCOPDを有する532人(平均65.0歳)である。なお、β遮断薬を既に投与されている人や、心不全などβ遮断薬の適応がある患者は除外されている。被験者は徐放性メトプロロール投与群とプラセボ投与群にランダム化され、主要評価項目として治療期間中におけるCOPDの初回増悪までの期間が比較された。

 ところが、本研究は、主要評価項目に関する無益性と安全性の懸念のため、研究自体が早期に中止された。中止までに得られたデータを解析した結果、初回増悪までの期間の中央値は、メトプロロール投与群で202日、プラセボ投与群222日と、両群に有意差を認めなかった(ハザード比1.05[95%信頼区間0.84-1.32])。それどころか、入院に至るような増悪リスクはメトプロロール群で有意に高いとの結果だった(同1.91[同1.29-2.83])。

著者プロフィール

青島周一(病院勤務薬剤師、「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)あおしま しゅういち氏 2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て、12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBMスタイル診療支援”の確立を目指し、多方面で活躍している。著書に 『ポリファーマシー解決!虎の巻』(日経BP) がある。

連載の紹介

青島周一の「医療・健康情報を読み解く」
インターネットの急速な普及により、様々な医療・健康情報が、誰でも手軽に入手できる時代となっています。しかし、それらは必ずしも妥当な内容を含んでいるとは限りません。本連載では、臨床医学に関する学術論文、つまり科学的根拠を取り上げながら、一般的な常識にとらわれず、医療・健康問題について薬剤師的視点で考察していきます。

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