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乳児におけるワクチンの同時接種は危険か

2018/09/14
青島 周一

 2種類以上のワクチンを同時に接種することを、同時接種と呼ぶ。乳児においては、接種忘れがなくなり各ワクチンの接種率が向上する、ワクチンで予防できる感染症から子どもたちを早期に守ることができる、保護者の負担が軽減するなどのメリットがあり、海外では早くから推奨されてきた。我が国においても、歴史は浅いものの、日本小児科学会が以下のような見解を公表し1)、同時接種を推奨している。

(1)複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種して、それぞれのワクチンに対する有効性について、お互いのワクチンによる干渉はない

(2)複数のワクチン(生ワクチンを含む)を同時に接種して、それぞれのワクチンの有害事象、副反応の頻度が上がることはない

(3)同時接種において、接種できるワクチン(生ワクチンを含む)の本数に原則制限はない

 一方で、ワクチン接種に関しては否定的な態度を示す人たちもいる。この人たちの中には、上記見解において引用された論文は、同時接種が一般的になる以前の1990年代の古いものであり、情報の妥当性としていかがなものか、と考える人がいる。また、乳児に対する複数のワクチン接種で、死亡リスクの増加を示唆した疫学的調査の結果を根拠に、同時接種の危険性を主張する人もいる。

 前者については、近年の報告を見ても、短期的な有害事象についての懸念は少ないように思われる。複数ワクチンの同時接種に関して、スティーブンス・ジョンソン症候群、アナフィラキシー、ギランバレー症候群、髄膜炎のリスクの増加は示唆されないという2014年の報告2)や、熱性痙攣のリスクは軽微であり、てんかんのリスクとの関連性は認めないとする2012年の報告3)がある。

 では後者のワクチンの同時接種と乳児死亡との関連についてはどうであろうか。ワクチン反対派から、その根拠として示されることの多い論文情報について、ひも解いていこう。

著者プロフィール

青島周一(病院勤務薬剤師、「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)あおしま しゅういち氏 2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て、12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBMスタイル診療支援”の確立を目指し、多方面で活躍している。著書に 『ポリファーマシー解決!虎の巻』(日経BP) がある。

連載の紹介

青島周一の「医療・健康情報を読み解く」
インターネットの急速な普及により、様々な医療・健康情報が、誰でも手軽に入手できる時代となっています。しかし、それらは必ずしも妥当な内容を含んでいるとは限りません。本連載では、臨床医学に関する学術論文、つまり科学的根拠を取り上げながら、一般的な常識にとらわれず、医療・健康問題について薬剤師的視点で考察していきます。

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