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薬の副作用でうつ病が増えるのか

2018/07/03
青島 周一

 「医者に出されても飲み続けてはいけない薬」といった過激なタイトルの特集記事が、週刊誌やウェブサイトに度々掲載されている。さらにそれでは飽き足らず、「薬が病気を作る」だとか、「認知症を引き起こす薬」などといった過激なタイトルも目立つようになってきた。そんな中、「うつ病や自殺さえ招く『薬の副作用』の新常識」と題された記事が、東洋経済ONLINEに掲載されていた1)

 同記事には、「世界5大医学雑誌の1つ、アメリカの医学総合ジャーナル『JAMA』2018年6月12日号に掲載された最新研究によると、アメリカ人の3分の1以上が、副作用でうつ病を起こす可能性がある処方薬を少なくとも1剤以上服用していることが明らかになった」 と記載されており、続けて「この中で最もよく用いられている薬は、降圧薬、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、鎮痛薬、ホルモン避妊薬だった」と具体的な薬剤カテゴリまで挙げられていた。

 さらには、「うつ病の副作用が起きる可能性のある薬の処方数が増えると、うつ病がある人の割合も高くなっていた(うつ病の有病率は、処方なし:4.7%、1剤処方:6.9%、3剤以上処方:15.3%)」とも書かれてあり、過激な記事タイトルとも相まって、「薬にはうつ病を引き起こす恐ろしい副作用がある」といった印象を植え付けている。

 確かに薬剤により、うつ病が惹起されることはあるが、医薬品と有害事象の関連性を評価することは並大抵なことではない。差し当たり、同記事に関しては以下の2点を指摘することができる。

(1)ソースとして提示された原著論文【論文1】は、横断調査であり、医薬品使用とうつ病発症の因果関係を論じられるような研究ではない。

(2)「うつ病を引き起こす可能性のある処方薬」として挙げられている薬剤が、本当にうつ病発症に寄与し得るのかについては、別のエビデンスを参照しながら丁寧に考察する必要がある。

著者プロフィール

青島周一(病院勤務薬剤師、「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)あおしま しゅういち氏 2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て、12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBMスタイル診療支援”の確立を目指し、多方面で活躍している。著書に 『ポリファーマシー解決!虎の巻』(日経BP) がある。

連載の紹介

青島周一の「医療・健康情報を読み解く」
インターネットの急速な普及により、様々な医療・健康情報が、誰でも手軽に入手できる時代となっています。しかし、それらは必ずしも妥当な内容を含んでいるとは限りません。本連載では、臨床医学に関する学術論文、つまり科学的根拠を取り上げながら、一般的な常識にとらわれず、医療・健康問題について薬剤師的視点で考察していきます。

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