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認知症“予備軍”を拾い上げる意義は

2018/06/05
青島 周一

 「軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)の診断を受けた日本人の6割が、3年以内に認知症に進行した」という情報が、ウェブサイト上のニュース記事1)に掲載されていた。

 MCIとは物忘れが主たる症状だが、日常生活への影響はほとんどなく、認知症とは診断できない状態のことで、正常と認知症の中間ともいえる状態を指す。冒頭のニュース記事は、【論文1】で示されたデータに基づいている。

【論文1】 Iwatsubo T,et al. Japanese and North American Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative studies : Harmonization for International trials. Alzheimers Dement.2018 May 8. [Epub ahead of print] PMID:29753531

 この研究は、米国におけるアルツハイマー病の発症予測や、治療薬効果を確認するための手法を開発するための行われた、Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)研究の日本版ともいえるもので、J-ADNI研究と呼ばれる。本論文のプレスリリースが日本語で公開されているので、英語が苦手な方は、以下のウェブサイトを参考にすると良い。

◆国立研究開発法人日本医療研究開発機構プレスリリース「J-ADNI研究によりアルツハイマー病早期段階(軽度認知障害)の進行過程を解明」

 本研究で対象となったのは、MCI 患者234人、軽度のアルツハイマー型認知症患者149人、健常高齢者154人の計537人である。解析の結果、アミロイド陽性MCIの進行過程は、日本と米国で類似したと報告されている。ニュース記事中の「3年間の追跡期間中に、MCIだった人の64%が認知症に進んだ」というのは、以下の箇所を出典としたものだろう。

「The higher rate of conversion to dementia in J-ADNI persisted until 18 months (43.4% [30.6%, 53.9%] in J-ADNI, and 31.2%[25.1%, 36.7%] in ADNI), and the rate in ADNI was relatively similar after 24 months, reaching 63.5% [49.9%, 73.4%] in J-ADNI and 60.0% [53.0%, 66.0%] at 36 months」

 この63.5%という数値は、アミロイド陽性のMCI患者75人における解析である。MCI患者全体(234人)における認知症進展は、1年で28.8%[95%信頼区間22.6-34.5]、3年で45.1% [95%信頼区間38.0-51.3]と報告されている。

 「物忘れを感じやすい人の6割が認知症に進展する」などと書かれると、認知症は早期発見、早期治療が大事なように思えるし、こうした症状が気になっている人は大きな不安を抱くことだろう。

著者プロフィール

青島周一(病院勤務薬剤師、「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)あおしま しゅういち氏 2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て、12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBMスタイル診療支援”の確立を目指し、多方面で活躍している。著書に 『ポリファーマシー解決!虎の巻』(日経BP) がある。

連載の紹介

青島周一の「医療・健康情報を読み解く」
インターネットの急速な普及により、様々な医療・健康情報が、誰でも手軽に入手できる時代となっています。しかし、それらは必ずしも妥当な内容を含んでいるとは限りません。本連載では、臨床医学に関する学術論文、つまり科学的根拠を取り上げながら、一般的な常識にとらわれず、医療・健康問題について薬剤師的視点で考察していきます。

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