
「イブプロフェンが、男性不妊に関連する」――。そんなニュース記事がウェブ上に掲載されていた。同記事によれば、男性がイブプロフェンを服用すると、生殖機能が低下する中年期のようなホルモンの状態になることが分かったという。イブプロフェンは解熱鎮痛薬として医療用医薬品のみならずOTC薬にも含まれる成分であり、頭痛などで長期に服用している人も少なくないだろう。もしこれが事実であれば、公衆衛生上、重要な問題であることに違いない。
ただし、ここで1つ注意が必要である。
「○○という薬は○○という有害事象に関連する」という言い回しを、我々は「○○という薬は○○という有害事象を引き起こす」と、無意識のうちに変換してしまう傾向がある。後者の「~が~を引き起こす」という文章は因果関係を記述したものであるが、「関連」と「因果関係」はイコールではない。因果関係とは、ある出来事が原因となって、その結果、別の出来事が引き起こされる関連のことである。しかし、世の中には見掛け上、因果関係っぽく見える関連というものが数多く存在する。
分かりやすい例として、ライターを所持している人の割合と肺癌発症率の関連がある。恐らくライターを所持している人は、所持していない人に比べて肺癌発症率が高い。しかし、ライターが肺癌を起こすとは考えにくいし、そう考える方がどうかしている。結論から言えば、ライター所持と肺癌発症率の関連は因果関係ではなく相関関係である。ライターを所持している人は喫煙者である可能性が高い。つまり肺癌を引き起こしているのは、ライターではなく喫煙である。
そもそも因果関係などというものが実在するのか、と問われれば、この世界には自然法則はあっても因果などというものは存在しないのではないか……。筆者はそんな風に思うこともあるが、前置きが長くなるので、その話はまた別の機会にしたい。