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ケース15 有害リスク軽減のために提供できる選択肢は?
ベンゾジアゼピン系薬の依存を心配する68歳男性

2017/01/26
青島 周一

 今回の症例は68歳男性の中野洋三さん(仮名)です。3年ほど前より、不眠症状に悩まされ、以来、ブロチゾラム(商品名レンドルミン他)を継続的に服用しています。うつ病などの精神疾患の既往や併存はなく、不眠は原発性不眠症と診断されています。

CASE#15 68歳男性、中野洋三さん(仮名)

既往歴
50歳頃:高血圧
65歳頃:原発性不眠症


検査データ
(詳細情報なし)


処方内容
(1)
【般】アムロジピン口腔内崩壊錠5mg 1回1錠(1日1錠)
【般】エナラプリルマレイン酸塩錠5mg 1回1錠(1日1錠)
【般】ランソプラゾール口腔内崩壊錠15mg 1回1錠(1日1錠)
  1日1回 朝食後 28日分
(2)
【般】アトルバスタチン錠5mg 1回1錠(1日1錠)
  1日1回 夕食後 28日分
(3)
【般】センノシド錠12mg 1回2錠(1日2錠)
【般】ブロチゾラム錠0.25mg 1回1錠(1日1錠)
  1日1回 就寝前 28日分

 中野さんは寝つきが悪くなってから、夜はコーヒーを摂取しないなど、生活習慣には気を付けてきました。ただ、薬を飲まないと眠れなくなってしまうのではないかという不安が常にあり、薬は手放せないと言います。ところがある日、薬局で次のように相談されました。

この睡眠薬(ブロチゾラム)を飲んでいると、頭がぼけるからやめた方がいい、って友人に言われたんだよ。こんなもん麻薬と同じだから早くやめた方がいいってさ。まあ、麻薬は言い過ぎだと思うけど、やっぱりこの薬、クセになったり、副作用もあるんだろう?なんとなく昼間だるいのはこの薬のせいかなぁ。やめたいと言えばやめたいけど、寝れなくなったら…、と思うとなかなかねぇ。これに代わるもっと安全な薬とかないのかなぁ…。

 今回は、ポリファーマシーと関わっていく上で遭遇頻度が高く、かつ、なかなか介入が難しいように思われるベンゾジアゼピン系薬に焦点を当ててみましょう。

 ベンゾジアゼピン系薬は代表的な「対症的薬剤」です。医学的妥当性のみでその治療継続要否を判断することがなかなか難しい薬剤であるが故に、同薬に対する薬理学的介入も困難だといえます(ケース14参照)

 ただし、本ケースでは、患者さん自身がブロチゾラムの継続に、副作用などの観点から不安を抱いているようです。薬物治療に対する患者の不安は、その思いを少しでも解消するため選択肢を提供するという意味で、薬学的介入を行う起点になります。

 ベンゾジアゼピン系薬に限った話ではないですが、患者が抱く治療への関心というものがなかなか軽視できない薬剤について、その有効性・安全性は必ずエビデンスベースで定量的にアセスメントする必要があります。医療は言うなれば“価値交換の場”です。つまり、ベンゾジアゼピン系薬により実感される不眠症状の改善という価値と、同薬によりもたらされる弊害・有害事象に対する価値を比較し、最終的にどちらの価値を重視していくか、という問題であって、単に「リスクがあるからやめましょう」と言えば済む問題ではないのです。

 有効性・安全性について定量的にアセスメントした上で、(1)患者がその有効性をしっかり実感できているのか、(2)想定される有害リスクは目の前の患者にとって重要なことか、(3)有害リスクを減らすためにどんな選択肢を提供することができるのか、この3点をしっかり考える必要があります。

 では、押さえておきたいエビデンスを整理していきましょう。ベンゾジアゼピン系薬の有害事象リスクは多岐にわたりますが、今回は認知症リスクについて重点的に検討します(同薬のエビデンスについては、書籍『ポリファーマシー解決!虎の巻』ケース12も参照してください)。

著者プロフィール

青島周一(病院勤務薬剤師、「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)
あおしま しゅういち氏 2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て、12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBMスタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録をブログ「地域医療の見え方」などに書き留めている。

連載の紹介

青島周一の「これで解決!ポリファーマシー」
近年、医療現場では多剤併用(ポリファーマシー)が問題となっています。本連載ではポリファーマシーの具体的な症例を提示しながら、薬学的・医学的な問題点を整理するプロセスや、医療従事者と患者が抱いている薬物療法へのイメージのギャップをどう埋めるかについて考えていきます。論文の読み方は、「症例から学ぶ薬剤師のためのEBM」を参照してください。

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