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ケース5 患者が困っていないポリファーマシーにどう関わる?
不整脈症状のない患者へのジゴキシン漫然投与

2016/05/10

 今回のテーマは、「患者が困っていないポリファーマシーにどう関わるか」です。早速、仮想症例を見ていきましょう。

 76歳男性、田原元治さん(仮名)。きまじめな、口数の少ない男性です。50代から高血圧と糖尿病の治療が開始されました。60歳の頃、生活環境の変化からか、血圧コントロールが不安定となり、また頻脈性不整脈による軽い動悸や息切れなどを経験。それ以来ジゴキシンを服用しています。しかし、その後、生活環境は安定して、頻脈症状はなくなりました。現在では脈拍の異常もなく、疾患コントールも落ち着いています。なお、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の既往はありません。

CASE#4 76歳男性、田原元治さん(仮名)

既往歴
50歳:高血圧
55歳:糖尿病
60歳:血圧コントロール悪化。頻脈性不整脈

検査データ(最新)
血圧142/90mmHg、心拍数90回/分、HbA1c 7.2%

処方内容
ブロプレス錠8 1回1錠(1日1錠)
ノルバスクOD錠5mg 1回1錠(1日1錠)
ハーフジゴキシンKY錠0.125 1回1錠(1日1錠)
バファリン配合錠A81 1回1錠(1日1錠)
ジャヌビア錠100mg 1回1錠(1日1錠)
     1日1回 朝食後 28日分
メトグルコ錠500mg 1回1錠(1日3錠)
     1日3回 朝昼夕食後 28日分

仮想症例の薬物治療において、気になるポイントを整理してみます。

薬物治療、ここが気になる!
・心不全や頻脈症状がないにもかかわらず、ジゴキシンが漫然投与されている。
・頻脈症状はないが、心電図上で心房細動は示唆されていないのか。
・バファリン(一般名アスピリン・ダイアルミネート)の処方意図不明。

 これまでの薬局窓口での会話内容などから、田原さんが自分の処方や健康問題に対して以下のような思いを抱いていることが分かっています。

今、特に困っていることはありません。
以前は親の相続のことで兄弟でもめて、夜通し話し合ったり引っ越したりと色々あり、体調を崩したこともありました。ですが、薬のおかげで、今は落ち着いています。
これからもしっかり薬を飲んで、いつまでも健康でいたいと思いますね。
 

 田原さんの処方内容と思いを聞いて、読者の皆さんはどんなことを考えましたか? 田原さんは、今現在、頻脈症状が出ていないようですが、少し心配なのは、潜在的に心房細動を有していないかということです。頻脈の原因の一つとして、心房細動が挙げられます。たとえ頻脈症状がなくても心電図などで心房細動が示唆される場合、少し気掛かりなことがあります。次ページから、具体的にエビデンスを見ていきましょう。

著者プロフィール

青島周一(病院勤務薬剤師、「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)
あおしま しゅういち氏 2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て、12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBMスタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録をブログ「地域医療の見え方」などに書き留めている。

連載の紹介

青島周一の「これで解決!ポリファーマシー」
近年、医療現場では多剤併用(ポリファーマシー)が問題となっています。本連載ではポリファーマシーの具体的な症例を提示しながら、薬学的・医学的な問題点を整理するプロセスや、医療従事者と患者が抱いている薬物療法へのイメージのギャップをどう埋めるかについて考えていきます。論文の読み方は、「症例から学ぶ薬剤師のためのEBM」を参照してください。

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