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総論(その1)
そもそもポリファーマシーは「悪」なのか?

2016/02/22

 薬剤師の業界では、すっかり市民権を得てしまっている「ポリファーマシー」という言葉。文字通り、「たくさんの薬」というイメージから、日本語では多剤併用と訳されることも多いようです。ポリファーマシーの定義については様々な考え方がありますが、概ね5剤以上の併用をポリファーマシーとすることが一般的になりつつあります1)2)

 ここで質問です。ポリファーマシーと聞いて、皆さんはどのような印象を抱きますか?たくさんの薬を飲まなければいけない状態は健康的とは考えにくいですし、薬物相互作用や経済的負担の観点から、どちらかといえばネガティブなイメージを持つ人は多いと思います。そう、ポリファーマシー問題は“善”か“悪”かでいえば、“悪”な状態であって、何らかの介入が必要である――そんな印象を抱きがちなのです。

 ポリファーマシーがネガティブなイメージを想起させるのは、何かしら根拠があるからでしょう。例えば、薬理学的に相互作用の心配があるとか、病態生理学的に不要と思われる薬剤が使われているとか。疫学的に見れば、高齢者におけるポリファーマシー状態は、薬物有害反応が増加する3)、パーキンソン病が増加する4)、大腿骨頸部骨折が増加する5)、認知症が増加する6)――など、ネガティブな報告を挙げれば切りがありません。さらに、複数の研究で死亡リスクの増加が示されており1)7)8)、医療倫理の観点からも重大な問題といえます。これらの根拠は、ポリファーマシーに悪いイメージを抱くのに十分な説得力がありますよね。

 もっとも、1つの薬剤にも有害事象のリスクに関する複数の疫学的研究があるわけですから、それが5剤も6剤も重なれば、当然の結果かもしれません。また、ポリファーマシー状態では潜在的に不適切な薬剤の占める割合が増えるといわれています9)(次回詳説します)。

 以上から、ポリファーマシーに対する(ネガティブな)思考プロセスをざっくりまとめると、次のようになります。これに医療経済的観点も付け加えることができるでしょう(日本では、残薬発生による医療費の無駄を減らす観点で、ポリファーマシーという概念が意図的に持ち出された側面があると思います)。

【前提1】ポリファーマシー状態では潜在的に不適切な薬剤使用が多くなる。
【前提2】ポリファーマシー状態では有害事象のみならず死亡リスク増加が報告されている。
【結論】ポリファーマシーは医学的に悪い状態であり、何らかの是正介入が必要である。

著者プロフィール

青島周一(病院勤務薬剤師、「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)
あおしま しゅういち氏 2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て、12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBMスタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録をブログ「地域医療の見え方」などに書き留めている。

連載の紹介

青島周一の「これで解決!ポリファーマシー」
近年、医療現場では多剤併用(ポリファーマシー)が問題となっています。本連載ではポリファーマシーの具体的な症例を提示しながら、薬学的・医学的な問題点を整理するプロセスや、医療従事者と患者が抱いている薬物療法へのイメージのギャップをどう埋めるかについて考えていきます。論文の読み方は、「症例から学ぶ薬剤師のためのEBM」を参照してください。

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