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第35回欧州心臓学会
プラスグレル30mgの前投与に非前投与を上回る効果なし、ACCOAST試験から
欧州で行われたトロポニン上昇を伴うNSTEMI患者4100例を解析

2013/09/02
當麻 あづさ=医療ジャーナリスト

フランスPitie-Salpetriere HospitalのGilles Montalescot氏

 冠動脈造影またはPCIを予定されているトロポニン上昇を伴う非ST上昇型心筋梗塞NSTEMI)患者において、P2Y12受容体阻害薬プラスグレル30mgの前投与には、非前投与を上回る効果が認められないことが示された。欧州でNSTEMI患者4100例を対象に行われたACCOAST試験の結果、明らかになった。フランスPitie-Salpetriere HospitalのGilles Montalescot氏らが9月1日、オランダ・アムステルダムで開催中の欧州心臓学会で発表した。

 ACCOAST(A Comparison of Prasugrel at PCI or Time of Diagnosis of Non-ST Elevation Myocardial Infarction)試験は、19カ国171カ所の医療機関を通じて、冠動脈造影またはPCIを予定されているトロポニン上昇を伴うNSTEMI患者4100例を対象に、プラスグレル前投与のベネフィットおよびリスクを検討するために行われた(プラセボ対照二重盲検試験)。

 プラスグレル前投与(30mg)は冠動脈造影の前に行われ、冠動脈造影でPCIが必要と判断された場合は術前にさらにプラスグレル30mg投与が行われた。PCI後は、プラスグレル10mgあるいは5mg(体重と年齢に応じて調整)が30日間投与された。一方、非前投与では、プラセボ投与が冠動脈造影の前に行われ、冠動脈造影でPCIが必要と判断された場合は術前にプラスグレル60mg投与が行われた。PCI後は、前投与群と同様にプラスグレル投与を行った。

 有効性の主要評価項目は、7日後の心血管死、心筋梗塞、脳卒中、緊急血行再建術、GP IIb/IIIa受容体拮抗薬(日本では未発売)の緊急投与の合計発生率だった。安全性の主要評価項目は、すべてのTIMI基準大出血(CABGに伴うかあるいは伴わないものも含む)とした。

 試験では4038例が登録され、試験参加の合意が得られた4033例がプラスグレル前投与群(2037例)と非前投与群(1996例)に無作為に割付けられた。それぞれ7日時点の症例数は2037例(98.6%)と1964例(98.4%)、30日時点では1958例(96.1%)と1924例(96.4%)で追跡率は高率だった。また、両群間の登録時の患者背景に著しい差はみられず、無作為化は良好だった。

 被験者のうちPCIを実施したのは68.7%、無作為化後7日以内に冠動脈バイパス術を行ったのは6.2%、薬剤治療を行ったのは25.1%だった。なお術前投与群のPCI実施までの投与後経過時間中央値は、4.3時間だった。

 試験の結果、有効性については、前投与群が10.0%だったのに対し非前投与群は9.8%で両群に有意差は認められなかった(ハザード比:1.02、95%信頼区間[CI]:0.84-1.25、P=0.81)。30日時点でも両群とも10.8%で有意差が認められなかった(ハザード比:0.997、95%CI:0.83-1.20、P=0.98)。PCIを実施した症例に絞って比較した場合でも、同様に両群に有意差は認めなかった。また年齢、性別、体重のほか、糖尿病の有無やクロピドグレルの投与歴の有無などのサブグループにおける検討でも同様の結果だった。

 一方の安全性については、30日時点のTIMI大出血の発生率は前投与群が2.9%だったのに対し非前投与群は1.5%で、前投与群が有意に高いという結果だった(ハザード比:1.97、95%CI:1.26-3.08、P=0.002)。7日時点でも2.6%と1.4%で、前投与群で有意に高率だった(ハザード比:1.90、95%CI:1.19-3.02、P=0.006)。

 Montalescot氏らは今回の結果から、トロポニン上昇を伴うNSTEMI患者に対するプラスグレル前投与(30mg)ではリスクが上昇し、ベネフィットも認められなかったと結論した。その上でESCの非ST上昇型ACSの管理に関するガイドライン2011で、P2Y12阻害が「as soon as possible」(Class I、A)となっている点については、今後見直しが必要となるだろうとの見解を示した。

 コメンテーターでUniversity Hospital GenevaのMarco Roffi氏は、「同試験結果は、NSTE-ACS患者に対しプラスグレルを投与する際にはPCI後のみでよい、というポジティブな視点で受け止められるのではないか」とし、Montalescot氏は「まったく同感であり、新しい薬を使う最良の方法は何かを示唆する結果だと思う」と答えた。

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