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兵庫・大阪・京都 心不全チーム医療研究会
心不全患者への緩和ケアはアドバンス・ケア・プランニングへ

兵庫県立姫路循環器病センター循環器内科の大石醒悟氏

 心不全患者への緩和ケアにおいて、主眼は症状緩和からアドバンス・ケア・プランニングへ進化している――。先月発足した兵庫・大阪・京都 心不全チーム医療研究会の第1回大会で、兵庫県立姫路循環器病センター循環器内科の大石醒悟氏は、同病院で緩和ケアに取り組む契機となった事例を紹介。その後の3年間の活動内容を振り返りつつ、今後の課題と展望を語った。

 大石氏は講演の冒頭、心不全の臨床においては、緩和ケアの主眼が「症状緩和」から「アドバンス・ケア・プランニング」へと進化していると指摘した。アドバンス・ケア・プランニングとは、(1)将来に向けてケアを計画するプロセス、(2)患者の不安、気がかり、価値観を引き出す、(3)個々の治療の選択だけでなく、全体的な目標を立てる、(4)目標、決定を共有する、(5)家族を含めて話し合いの機会を持つ、(5)リビングウィル(アドバンス・ディレクティブ)を含む――の各項目から構成される終末期医療のプロセスのことだ。

 「『終活』という言葉が流行語になったように、人生の最期を自分の望むように自分で準備するという考えが注目されている。心不全患者さんにも同じことが言えるのではないか」(大石氏)。では、「人生の最期を自分の望むように自分で準備する」ことを目指す心不全の患者さんに、医療側はどのように対応していけばいいのか。自問自答する中で大石氏らは、「単なる症状緩和ではなく、疾患の経過を末期に至る前から説明し、患者本人の意思を尊重した早期からの支持療法を導入していくというアドバンス・ケア・プランニングの考え方が重要」との結論に至った。

 大石氏らがアドバンス・ケア・プランニングに取り組むきっかけは、50代女性の症例だった。

 主訴は、呼吸困難感だった。現病歴は、以下の通り。30歳ごろ、心機能低下を指摘されたが、それ以降、加療歴はなかった。2010年秋ごろから呼吸困難感の進行を認め、同年末ごろに、うっ血性心不全の診断で入院となった。左室駆出率(LVEF)20%の心筋障害を伴う重症僧帽弁逆流症であり心機能は高度に低下していた。社会背景に目を向けると、1人暮らしで、2人の娘とは別居していた。長女は医療事務、次女は元看護師という背景だった。

 入院経過は、以下のようだった。

 重症心不全であったため各種の薬物療法を試行したが効果は乏しく、心移植の登録を検討していた。一方、本人と娘へ終末期であることを丁寧かつ十分に説明した後、最終的に、患者さんは苦痛、呼吸苦などを除く治療を望まれたという。第21病日に一般病棟へ転棟。終末期は図1のような経過をたどり、最期は徐脈から心停止に至り永眠された。

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