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みたに内科循環器科クリニックの三谷和彦氏に聞く
プライマリケア医と腎臓専門医の「見えない溝を埋めたい」
約80%のプライマリケア医が治療すべき患者を紹介できていない

みたに内科循環器科クリニックの三谷和彦氏

 昨年、横浜において横浜CKD連携協議会が本格的に始動した。プライマリケア医から腎臓専門医への紹介システムの構築と運用およびプライマリケア医へCKDを浸透させることを主たる目的とする。約8割のプライマリケア医が、治療すべき患者を的確に専門医へ紹介できていないという調査結果もあり、スムーズな連携が急務との判断から発足させたものだ。立ち上げに尽力した、みたに内科循環器科クリニックの三谷和彦氏は、「見えない溝を埋めたい」と力説する。

―― 横浜CKD連携協議会が必要だった理由は何でしょうか。

三谷 専門医の中には、「こんなに門戸を開いているのに、なぜプライマリケア医は患者を紹介しないのだろう」と話す方がいます。その一方で、プライマリケア医からは、「1人の患者を紹介するのに、どうしてこんなにも高いハードルをいくつも乗り越えなければならないのだろう」という声も聞かれるのです。私は、この両者の間に「見えない溝」があるのだと思いました。

―― そもそも、CKDの診断・病診連携がうまくいっていないのでしょうか。

三谷 多くの医師がうまくいっていないと実感しています。ところが、専門医とプライマリケア医の間に特に問題はないという先生方もいるのです。

―― うまくいっているという声もあるわけですね。

三谷 CKDの診断・病診連携について、紹介元の開業医の20%は病院勤務医時代もCKDに関わっていたいわゆる元専門医です。残りの80%の医師は病院勤務医時代にCKDとの関わりが希薄な、いわゆる非専門医です。

 「うまくいっているという声」は、元専門医である開業医と専門医の間から挙がっていたものなのです。従来の病診連携に参加している開業医は元専門医が大多数を占めるので専門医同士の間での連携ですから、「うまくいっている」というのもうなずけます。しかし、これではごく限られた中での連携に留まってしまうことになります。

―― では、うまくいっていないという声は、どこから出ていたのですか。

三谷 従来の病診連携システムでは病診連携に参加したくても参加できない非専門医と専門医の間でのことでした。

 ある調査では、約80%の開業プライマリケア医が、治療すべき患者を病院へ紹介できていないという報告もあります。つまり、うまくいっていないとの声の裏側には、「見えない溝」が横たわっていたわけです。

―― 具体的にはどういうことが考えられますか。

三谷 紹介する側の大きな問題としては、どのタイミングで専門医での受診を促すべきか迷うという点があります。学会の紹介基準はありますが、プライマリケア医には煩雑であることや、病院の設備・人員などの状況により、個々の病院で微妙に紹介基準が異なるためです。また、プライマリケア医にとってCKDは新しい疾患概念なので専門医がどのような検査や治療を行うか不明瞭なため自信を持って患者にすすめにくいという問題もあると思います。

―― 受け入れる側の病院では、どのような問題があるのでしょうか。

三谷 それぞれの病院で、紹介基準や治療内容が異なるという問題がありました。紹介先の病院ごとに基準や治療が異なるという状況は、自分が病診連携を主導できる元専門医の開業医にはさほど問題になりません。しかし多くの非専門医であるプライマリケア医にとって紹介を尻込みする大きな要因となる現状があったのです。CKDをプライマリケア医に浸透させるには、プライマリケア医の目線から見た簡素化された現実的な、しかも統一された基準が必要であると考えました。

―― 「うまくいっていないという声」があるということは、紹介するプライマリケア医にも、紹介先の勤務医にも、現状を何とかしたいという意思があるということですね。

三谷 「見えない溝」を解消するために、私達はまず、専門医と開業医の連携を図る組織が必要だと思いました。そこで2011年に、横浜市医師会の分科会として活動している横浜内科学会(医師会員約450人)と専門医のいる病院とをつなぐ横浜CKD連携協議会を発足させました。現在、約30の医療機関が参加しています。従来の病診連携システムが病院の専門医が主導しているのに対し、この病診連携システムの大きな特徴は、プライマリケア医が主導して作り上げたシステムだという点です。したがって「見えない溝」にも対応できていると自負しています。

―― これまでの活動内容を教えてください。

三谷 横浜内科学会が会員を対象に行った調査で、プライマリケア医のeGFR利用率が20%とeGFRが普及していないこと、個々の病院の紹介基準や治療内容が不明瞭で、交通アクセスや予約の有無といった具体的な連携方法も不明瞭といった点が「見えない溝」の原因として明らかになりました。そこで、横浜CKD連携協議会では、横浜市内の検査会社に働きかけ、プライマリケア医もeGFRが利用できる環境を整えました。

 また、個々の病院の状況を把握していなくても患者を紹介できるように横浜市内統一の「プライマリケア医から腎臓専門医への紹介システム」を構築しました。患者さんの流れのイメージ(図1)を明確にした一方で、専門医等と協議を重ね、紹介システムの要ともなるプライマリケア医からの腎臓専門医への「精査依頼書」と腎臓専門医からプライマリケア医へ提示する「治療計画書」の様式を整えました(表1)。この「精査依頼書」の特徴は、eGFR利用率が20%と低いことも考慮して、プライマリケア医の80%が利用しているクレアチニンも紹介基準として採用したことです。これにより、CKD紹介のハードルを下げ、病診連携での専門医とのやり取りの中でCKDに対する理解を深めることもねらっています。

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