大動脈破裂に至るリスクはそれほどでもない腹部大動脈瘤(AAA)だが、特に高齢者におけるAAAの有病率は思ったより高く、欧米の報告では65歳以上の男性で2.4~16.9%、女性で0.3~2.2%とされる。このAAA形成に最も関連の深い危険因子は喫煙だが、今回、たばこの成分であるニコチンとAAAの関係を示す興味深い論文が発表された:
Maegdefessel L, et al. MicroRNA-21 blocks abdominal aortic aneurysm development and nicotine-augmented expansion. Sci Transl Med. 2012 Feb 22;4(122):122ra22.
AAAと喫煙
AAAの危険因子には高血圧や加齢なども知られているが、喫煙はこれらより強くAAA発症と関連する。肺癌を除けば、喫煙との相関が最も高い疾患がAAAである。実際、90%以上のAAA患者が喫煙歴を有するという。今回の論文から、たばこの成分であるニコチンがAAAの進展と関係していることが示された。
AAAの疾患モデルとして、ブタ膵臓エラスターゼをマウスに投与するモデルが定着している。Maegdefesselらはこのモデルをベースに、ニコチンの血中濃度が喫煙時と同程度になるように皮下ポンプで持続投与する実験系を確立した。この系で腹部大動脈径を追跡すると、プラセボ投与群に比べニコチン投与群では、腹部大動脈径が有意に拡大した(図1A)。
たばこには400種類もの成分が含まれている。少し乱暴な言い方だが、その中でタールは肺癌のリスクに、ニコチンは依存性の原因になっている。一方、AAA形成の主要リスクは、タールではなくニコチンのようである。
ニコチンによるAAA形成時、マイクロRNAの1つであるmiR-21の発現が増加していることから(図1B)、miR-21がAAAの病態形成に関与していることが示唆された。
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