
米国Cleveland Clinic Heart and Vascular InstituteのStephen J Nicholls氏
スタチンによる脂質低下療法によって心血管疾患の発症を抑制できることは、これまでに数々の臨床試験で示されてきた。また、近年、冠動脈疾患(CAD)患者に対してスタチンを投与することにより冠動脈のプラークの進展を抑制、あるいは退縮が得られることがいくつかの臨床試験で示されている。
今回、ストロングスタチンであるロスバスタチンあるいはアトルバスタチンの最大用量を用いる積極的脂質低下療法を行った結果、これまで臨床試験で得られてきた成績の中でも、プラークの退縮が得られた対象患者の割合が最も多く、得られたプラークの退縮も最も大きいことが示された。
これは、症候性CAD患者を対象に、ロスバスタチン40mg/日あるいはアトルバスタチン80mg/日を投与して、血管内超音波検査(IVUS)によりプラークの退縮を比較検討したSATURN試験の結果から明らかになったもの。
米国Cleveland Clinic Heart and Vascular InstituteのStephen J Nicholls氏が、フロリダ州オーランドで開催された第84回米国心臓協会・学術集会(AHA2011)で報告した。
SATURN試験は、北米、欧州、南米、オーストラリアの施設が参加した大規模臨床試験で、CAD患者を対象に、IVUSを用いてロスバスタチンとアトルバスタチンのプラーク進展抑制効果を直接比較した。
対象は、直近1カ月間において、スタチンを服用していた例では低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値が80mg/dL以上、スタチンを服用していなかった例では100mg/dL以上だった症候性CAD患者。これらの患者は、造影検査により20%以上の狭窄が確認されている。
まず1578例に先行治療としてロスバスタチン20mg/日あるいはアトルバスタチン40mg/日を2週間投与した。2週間後、LDL-C値が116mg/dL未満に到達した1385例を、ロスバスタチン40mg/日群(以下、ロスバ群)あるいはアトルバスタチン80mg/日群(以下、アトルバ群)に無作為に割り付け、104週(2年間)追跡した。
有効性の解析は、最大用量のスタチンを投与する1カ月前にIVUSでプラークを評価し、104週後に再度、IVUSによる評価が実施できた症例を対象とした。対象者数はロスバ群520例、アトルバ群519例となった。