日経メディカルのロゴ画像

New Insight from Basic Research
ミオシンアクチベーターomecamtiv、P1・P2結果出る
新しいタイプの心不全薬、新薬として日の目を見ることができるか

2011/09/16
古川 哲史=東京医科歯科大学

 今年3月、本シリーズ「New Insight from Basic Research」の記念すべき第1回目として、ミオシンアクチベーター omecamtiv mecarbil の前臨床試験(動物実験)の結果を紹介した(「新たなタイプの心不全薬シーズの登場」)。8月20日発行のLancet誌に、驚くべきスピードで同薬物の臨床試験第1相と第2相の結果がside-by-sideで報告された。

Dose-dependent augmentation of cardiac systolic function with the selective cardiac myosin activator, omecamtiv mecarbil: a first-in-man study. John R Teerlink, et al. Lancet. 2011;378:667-75.

The effects of the cardiac myosin activator, omecamtiv mecarbil, on cardiac function in systolic heart failure: a double-blind, placebo-controlled, crossover, dose-ranging phase 2 trial. John GF Cleland, et al. Lancet. 2011;378:676-83.

 これらの論文は、2つの意味で興味深い。1つ目は、ミオシンアクチベーターという、今までにない全く新しいタイプの心不全薬の臨床試験という点である。2つ目は、通常薬物開発の論文はめったに公表されることはないが、本論文はアカデミア発信の創薬研究であるため、Lancet誌に公表されたことである。

 ご存知のように薬物臨床試験は、第1相(健常人を対象)、第2相(少人数の疾患患者を対象)、第3相(多人数の疾患患者を対象)試験からなるが、今回、第1相と第2相試験の結果が報告されている。

 心不全の治療は、軽症の場合(NYHA I~II度など)はレニン・アンジオテンシン系、交感神経β受容体、アルドステロン系などの神経体液性因子を標的とする薬物が用いられ、重症の場合(NYHA III~IV度など)は交感神経作動薬などの収縮力増強作用を有する薬物が使用される。

 前者は長期生命予後を改善するが、後者は一時的な症状改善にはつながるものの長期予後はかえって悪化させるとの結果が得られている。その原因の1つは、細胞内Ca2+過負荷による、致死的不整脈の発現にある。

 これに対してアクチン・ミオシン相互作用を直接の標的とするミオシンアクチベーターは、細胞内Ca2+動態に影響を与えることなく収縮力を増強することができるので、新しいタイプの心不全薬として期待されている。

 その第1号であるomecamtiv mecarbilは、ミオシン触媒ドメインに結合し、アクチンに結合した力産生状態への移行速度を促進することにより、収縮期により多くのアクチン・ミオシン架橋をもたらすことが見出された(詳細は「新たなタイプの心不全薬シーズの登場」参照)。このアクチン・ミオシン架橋の増加が、収縮時間の延長と1回拍出量の増加をもたらすという。研究グループはこのメカニズムを比喩で、“more hands pulling on the rope”と称している。
 

この記事を読んでいる人におすすめ